AGAと男性ホルモン(テストステロン)に関する誤解を解消
AGA(男性型脱毛症)と男性ホルモン、特にテストステロンとの関係には、多くの誤解がつきものです。「テストステロンが多いと薄毛になる」「男性ホルモンが減るとAGAが改善する」といった情報は、必ずしも正確ではありません。
この記事では、AGAの主な原因は男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)であることやテストステロンとの違い、男性ホルモンの役割について詳しく解説します。AGA治療を検討している方は、男性ホルモンについて正しい知識をつけておきましょう。
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男性ホルモンの基礎知識
男性ホルモンは思春期に分泌が増え、20歳代以降は徐々に分泌量が減少するホルモンです。そのなかでも主なものが「テストステロン」と呼ばれ、全身に作用します。具体的には、筋力の維持、骨の成長、毛髪の育成、性欲の維持や精子の生成など多岐にわたります。この章では、男性ホルモンであるテストステロンとジヒドロテストステロン(DHT)について解説します。
テストステロンとは
体内で分泌される男性ホルモンの内訳は、約5%は副腎で生成されるアンドロゲン、約95%は精巣で生成されるテストステロンです。男性ホルモンの多くをテストステロンが占めているため、「男性ホルモン」といえばテストステロンを指すことが多くなります。
テストステロンは、筋肉や骨、中枢神経、骨髄、皮膚、前立腺、性機能など全身の臓器で重要な生理的役割を担っています。思春期になると精巣が増大し、テストステロンの分泌が増量しますが、20歳代をピークに年齢とともに減少します。このため、加齢に伴い筋肉量や骨量の減少、体脂肪増加、性機能障害などがみられます。これは年齢に関係なく、若い方でもテストステロンが減少すると起きる変化です。
ジヒドロテストステロン(DHT)とは
ジヒドロテストステロン(DHT)とは、男性ホルモンの一種です。テストステロンよりも活性が高いとされており、5α還元酵素の働きによって、テストステロンからDHTに変換されます。
また、テストステロンやDHTは、精巣だけでなく脳の記憶中枢を司る「海馬」でも合成されており、中枢神経の働きにおいて重要な役割を果たしていることが解明されてきました。
DHTはAGAの原因と考えられていますが、詳細は次の章で解説します。
男性ホルモンがAGAを引き起こすメカニズム
AGAの主な原因は、男性ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)です。しかし、男性ホルモンは誰にとっても必要なホルモンであるにもかかわらず、AGAを発症するかどうかは個人差があります。この章では、男性ホルモンがどのようにしてAGAを引き起こすのか、そのメカニズムを解説します。
テストステロン量とAGAの関係
「テストステロンの量が多いとAGAになりやすい」と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、AGAの原因とされているのは、あくまでもテストステロンが5α還元酵素によって変換されてできたジヒドロテストステロン(DHT)です。テストステロン量そのものが、必ずしもAGAに繋がるというわけではありません。
ジヒドロテストステロン(DHT)量の増加がAGAの原因となる
毛が生えかわる過程には「成長期」→「退行期」→「休止期」の3つの段階があり、毛周期と呼ばれます。成長期には、毛の元となる毛母細胞が増殖して毛が伸びますが、退行期には、毛母細胞が死滅して毛の成長が止まります。そして休止期を経て、次の成長期に向けて、古い毛が抜け落ち、新しい毛に生えかわります。
つまり、毛周期が1周することで、毛の世代が変わっていくのです。AGAの原因となるジヒドロテストステロン(DHT)は、毛母細胞の増殖を抑制する作用を有するため、成長期が短くなり、毛が十分に成長する前に抜けていきます。
男性ホルモンに影響を与えるフィナステリド・デュタステリド
男性ホルモンに影響を与える薬剤に、フィナステリドとデュタステリドがあります。両剤とも5α還元酵素の働きを阻害し、テストステロンからジヒドロテストステロン(DHT)への変換を抑制します。
つまり、男性ホルモン全体に影響を与えるのではなく、AGAの原因となるDHTだけを減少させる効果があります。
フィナステリド
フィナステリドは、テストステロンからより活性の高いDHTに変換するⅡ型5α還元酵素の阻害薬です。その効果と安全性は、国内外の多数の臨床試験で確認されています。
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デュタステリド
デュタステリドは、Ⅰ型・Ⅱ型5α還元酵素両方に作用する阻害薬です。フィナステリドと同様に、多くの臨床試験結果が発表されています。
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注意したい副作用:男性機能の低下
しかし、これらの薬には稀ではありますが、性欲減退や勃起障害(ED)など、男性ホルモンのバランスに起因する副作用が認められています。
一方で、フィナステリド0.2mgまたは1mgを投与した臨床試験を例にとると、性機能障害の発生頻度は以下となっています。
- EDの発生頻度:0.7%(276人中2人)
- 性欲減退の発生頻度:1.1%(276人中3人)
この結果から、男性機能の低下が副作用としてあらわれる可能性は高くないことがわかります。また、デュタステリド及びフィナステリドの使用による性機能障害のリスクを比較した研究では、2つの薬に差はみられなかったと報告されています。
用法用量をしっかり守った上で、もし気になる症状があらわれた場合は、医師に相談しましょう。
フィナステリドやデュタステリドと性機能障害の関係については、こちらの記事をご覧ください。
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男性ホルモンがもたらす健康への影響
男性ホルモンは、AGAを引き起こすだけのホルモンではありません。先に少し触れているように、心と体の健康を維持するために欠かせない重要なホルモンです。この章では、テストステロンが体にどのような影響を与えているのかを詳しく紹介します。
テストステロンの重要性
男性は思春期に精巣が増大することで、テストステロンの分泌量が増加し、男性的な体の特徴が形成されます。具体的には、筋力の増大、声変わり、喉仏の成長、体毛の増加、精子形成機能の成長、陰茎の増大、性欲の増加などです。
また、テストステロンは肉体的な作用だけでなく、メンタル面にも以下の表のように作用します。
※「日本メンズヘルス医学会 テストステロンとは:テストステロンの作用」を参考に作成
男性がホルモンバランスを維持するには
男性ホルモンのバランスを維持するために、以下のポイントを心がけましょう。
- バランスの良い食生活
- 適度な運動
- ストレス管理
ホルモンバランスを維持するためには、バランスの良い食事が必要です。タンパク質と糖質の摂取量と男性ホルモンへの影響を研究した報告では、高タンパク質・低糖質の食事を続けたグループで、安静時と運動後のテストステロン値が下がることがわかりました。これは、過剰なタンパク質摂取が体に負担となり、ホルモンバランスに影響を与える可能性があることを示唆しています。栄養が偏らないよう、主食である米なども適度に食べましょう。
次に運動です。テストステロンには筋肉を増強する作用があり、また筋肉に刺激を与えることで増加します。また、筋力トレーニングだけでなく、有酸素運動でもテストステロンが増加すると報告されています。
3つ目にストレスの管理も重要です。ストレスを受けると、ストレスに抵抗するためにコルチゾールというホルモンが分泌されます。コルチゾールは、テストステロンを低下させる作用があるため、男性ホルモンを維持するためには、ストレスを上手に管理することが大切です。
男性ホルモンについてよくある質問
ここでは、男性ホルモンに関するよくある質問と回答を紹介します。
Q.男性ホルモンを減らせばAGAは改善する?
A.男性ホルモンを減らした場合、AGAの改善に繋がる可能性はあります。しかし、男性ホルモン減少によるデメリットの方が大きいと考えられます。
先述の通り、男性ホルモンは心身にとって大切なホルモンです。テストステロンが不足すると、筋肉量の減少、骨量低下、性機能障害、体脂肪増加などに繋がる恐れがあります。
Q.テストステロン値が高いと必ずAGAになる?
A.テストステロン値が高いからといって、必ずしもAGAになるわけではありません。AGAは、テストステロンが5α還元酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることで起こります。もしテストステロン値だけでなく5α還元酵素の活性が高い場合、DHTが大量に生成されてAGAのリスクが高くなる可能性はあります。
Q.テストステロン値を測定する方法はある?
A.テストステロン値は、血液検査によって測定可能です。気になる方は医療機関で相談してみましょう。
Q.AGA治療で男性機能は失われる?
A.フィナステリドやデュタステリドには、性欲減退や勃起不全などの副作用が報告されています。これらの副作用は数%の発現率であり、全ての男性に起こるものではありません。
もし副作用が出た場合も、服用を中止すれば症状が回復するケースがほとんどです。医師の指導・管理のもとでAGA治療を受けることをおすすめします。
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Q.ジヒドロテストステロン(DHT)だけ狙って減らすことはできる?
A.フィナステリドやデュタステリドは、あくまでテストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)に変換する5α還元酵素の働きを阻害する薬です。DHTだけを狙って減らすメカニズムの薬ではない点にご注意ください。
フィナステリドやデュタステリドの服用で、DHTの生成を抑制できます。また、海外のデータでは、フィナステリド0.2mg/1mgを6週間服用した人たちの血清テストステロン濃度に変化はなかったと報告されています。
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まとめ:AGAと男性ホルモンの正しい知識を持とう
AGAの原因として注目されるジヒドロテストステロン(DHT)は、男性ホルモンであるテストステロンから生成されますが、男性ホルモン(テストステロン)自体は健康の維持にも重要な役割を果たします。
男性ホルモンとAGAに関する誤解を解いて正しい知識を持ち、効果的なAGA対策とホルモンバランスの維持を目指しましょう。
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出典
一般社団法人 日本内分泌学会
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版
Drug Delivery System 24-2,2009 109-116
プロペシア添付文書
ザガーロ添付文書
日本メンズヘルス医学会「テストステロンとは」
Metabolism. 1996 Aug;45(8):935-9
Whittaker J, Harris M. Nutr Health. 2022 Dec;28(4):543-554.
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