発毛剤は使うべき? メカニズムや注意点を医師が解説
AGA(男性型脱毛症)の治療として、発毛剤を使うべきか迷っている方もいるのではないでしょうか。今回の記事では、AGA治療に使用する発毛剤について医師の辛島先生に詳しく解説していただきました。
そもそも発毛剤とは?
「発毛剤」の定義は製薬会社やクリニックによって異なります。
医師としてクリニックで実際に患者さんにお伝えするときは「発毛剤」という言い方ではなく薬品や成分で話すことが多いです。例えば「ミノキシジルは髪の毛を増やすお薬です」「フィナステリド、ディタステリドはAGAの予防がメインです」という伝え方です。
発毛剤と育毛剤は違う?
患者さん側から「飲み薬と一緒に育毛剤も併用していいですか?」という質問をされることがあるので、この場合はおそらく育毛剤=外用薬と認識されていると思います。
しかし、ある製薬会社のHPでは、「発毛剤は医薬品」「育毛剤のほとんどは医薬部外品」と分けられていることもあります。この場合、ミノキシジル などの病院で処方するAGA治療薬は「医薬品」なので、発毛剤ということになります。
一方で、「ミノキシジルが含まれているものが発毛剤である」と記載している製薬会社もあり、育毛剤と発毛剤の違いについてはさまざまな定義が存在しているようです。以下にまとめます。
①
発毛剤=医薬品(ミノキシジル)
育毛剤=医薬部外品(薬局で買える)
②
発毛剤=内服薬
育毛剤=外用薬
③
発毛剤=ミノキシジルが含まれているもの
育毛剤=それ以外
発毛剤は使うべき?
この記事では
発毛剤=医薬品(ミノキシジル)
育毛剤=医薬部外品(薬局で買える)
と定義して話を進めます。
もし、AGAに悩んでいて発毛剤を使ってみたいと考えているなら、使うべきだと思います。最近は、医薬品と医薬部外品のコストの差もあまり大きくありません。そういう意味では、より発毛の効果が期待できる、発毛剤(医薬品)を使ったほうがよいでしょう。
多少AGAの症状が出ていても、自分が気にしていない方は使うべきではありません。AGA治療は、保険診療の高血圧などの健康上の治療とは異なり、あくまで個人の「こうなりたい」という希望に即して行われるものです。
AGAで悩んでいるなら、正しい使い方を理解した上での使用をおすすめします。副作用などの適切な説明を受けた上で、しっかりと自己判断しましょう。
発毛剤の種類(有効成分)とメカニズム
代表的な発毛剤(医薬品)であるミノキシジル について、それぞれ詳しく説明します。
ミノキシジル
ミノキシジルには外用薬と内服薬がありますが、有効成分は同じです。
AGAの原因のひとつは「ヘアサイクルの乱れ」にあります。ミノキシジルにはこのヘアサイクルを整える働きがあります。ヘアサイクルは一般的に2〜5年で、休止期、成長期、退行期が繰り返されます。このうち休止期に留まっている毛や毛根があるとAGAにつながります。休止期とは、髪の毛が生える能力はある(毛根はある)けど生えようとしていない状態です。
また、成長期が短くなることで、十分に髪の毛が成長しないまま退行期に入ってしまいます。 ミノキシジルには休止期を成長期に移行させること・成長期を延長させる働きがあります。そうすることで、十分に成長した健やかな毛を得ることができるのです。
AGA初期の悩みの症状のひとつに「軟毛化」がありますが、これは、髪の毛の本数自体は足りているけれど1本1本の毛が細く、全体的にボリューム感が足りない状態です。地肌が見えてしまうのも、この「軟毛化」であることが多いです。
このように、ミノキシジルによって髪の毛の「成長」と「生やす」というダブルの効果が得られることが特徴です。ミノキシジル外用薬は成分濃度が5%までのものは薬局で買えますが、それ以上のものはクリニックでの処方が必要です。
ミノキシジルはもともと血圧を下げる薬で、副作用の多毛症の発毛効果を利用するので、ミノキシジル配合の内服薬は国内未承認薬です。内服薬の方が外用薬より効果が高いことが特徴です。内服薬は身体全体が毛深くなる可能性が高く、全身の体毛が毛深くなるのが嫌な場合や副作用が心配でな場合は、ミノキシジル外用薬あるいはミノキシジル内服薬低用量2.5mgからの開始を検討しましょう。ミノキシジルの副作用を利用して発毛しているので、薬の使用を中止すると毛量は減少します。
発毛剤の副作用と注意すべきポイント
発毛剤であるミノキシジルの注意点についてお伝えします。
ミノキシジルはもともと血圧を下げる薬として開発されたので、内服薬では血管拡張による頭痛や動悸・むくみ、血圧低下による立ちくらみなどの副作用が見られる場合があります。簡単にいうと心臓に負担をかけてしまうということですが、日本のクリニックで出しているミノキシジル内服薬の容量ではそこまで副作用が起こる可能性は高いものではありません。それでも可能性はゼロではないので、必ずクリニックを受診して処方してもらうようにしましょう。むくみや息苦しさなどの初期症状が出た場合は、必ず使用を中断してください。
また、もうひとつの副作用として全身に多毛症が見られる場合もあります。ここで活躍するのが外用薬です。頭皮に直接塗ることで、内服薬で起こる副作用を防ぐことができます。ただ、外用薬は内服薬に比べると吸収効率はよくないため、効果が高いのは内服薬ともいえます。
いずれの使用法においても、AGAの進行具合に応じて医師との相談の上で使用してください。最初は内服薬を試してみて、もし副作用出た場合は外用薬に切り替えるのもひとつの方法です。
発毛剤にまつわるQ&A
最後に、発毛剤についての素朴な疑問にお答えします。
Q①:どれくらいの期間、薬を使用すれば効果がでる?
3〜6カ月の使用後に効果が出ることが多いです。
多めに見ても1年を過ぎたら、植毛などの代替案も視野に入れましょう。
比較的効果が出やすいのは、AGAの進行初期の方です。一例を挙げると、あるAGA初期段階の患者さんは年齢が40代後半だったのですが、3カ月くらいで効果が見られた方もいました。年齢よりもAGAの進行度が効果の出現に影響するようです。
Q②:使い始めたら、一気に抜け毛が増えたが大丈夫?
これは「初期脱毛」という症状で、薬の効果が出ている証拠ともいえます。というのも、新しい髪の毛が生えてきて、古い毛を押し出している状態だからです。
通常、初期脱毛は1カ月くらい続きます。
患者さんによく聞かれるのは「初期脱毛では、まわりに気づかれるほど抜けますか?」という質問です。個人的な感覚でいうと、まわりに気づかれるほど抜ける方はまだ見たことがありません。
AGAがそこまで進行していない方は、初期脱毛も大きくは起こりません。逆に、AGAの進行が深刻な方は初期脱毛が多いことがありますが、それでも周囲に気づかれるほどではないことがほとんどです。
初期脱毛に対して、そこまで大きな不安を抱く必要はないと思います。
Q③:発毛剤と育毛剤は併用してもいい?
発毛剤と育毛剤の併用は問題ありません。実際に併用している患者さんもたくさんいらっしゃいます。
Q④:発毛剤はクリニックにかからないと手に入らない?
厳密にいうと、クリニックにかからなくても海外から医薬品を個人で輸入することはできます。
しかし、医薬品の個人輸入はリスクが高いのでおすすめできません。
聞いたことがあるのは、ED薬を個人で輸入した方の薬に糖尿病薬の成分が入っていたケースです。個人輸入は本物にあたればコスパはよいかもしれませんが、そこまでリスク背負うのかをよく考えるべきです。
薬を安全に使うためにはクリニックでの受診を強くすすめます。
発毛剤はしっかりと個人で判断して使おう
AGAの治療はいろいろな薬を試した方がよい、コストかければかけるほどよい、という方も少なくありません。
もちろん、満足するような効果が得られるなら、それでもよいでしょう。しかし、必要以上に高価な治療薬を購入させる業者もいることも事実です。
消費者の不安を煽っていろいろな薬を試させることもあるので、複数のサイトを見比べる、口コミをチェックする、クリニックで医師に相談するなどして、価格と内容をしっかり見極めて発毛剤を選びましょう。
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