肥満が薄毛を引き起こす理由! 脱毛リスクを減らす対処法
肥満は薄毛の一因であり、研究により肥満が脱毛のリスクを高めることが科学的に証明されています。食生活の改善や運動、生活習慣の見直しは、肥満の解消とともに薄毛の予防にも効果を示す可能性があります。今回は、肥満が薄毛の原因となる理由や肥満の解消方法について解説します。
薄毛と肥満の関係とその原因
薄毛と肥満の関係性とその原因について、科学的な根拠をもとに詳しく説明します。
肥満度が高いほど脱毛症の重症度が高い
肥満度が高いほど、脱毛症の重症度が高いといわれています。台湾での男性型脱毛症に関する研究では、次のように報告されています。
AGAと診断された189名の男性(平均年齢30.8歳)を対象に、脱毛症の重症度とBMI(Body Mass Index)との相関を調査しました。結果は、過体重または肥満(BMI≧24kg/m2)の被験者で重症脱毛症のリスクが高いことが明らかになりました。またBMIが高いほど、特に早期に発症するAGAの重症度と関連していると結論づけられ、肥満度と薄毛の関連性が示されたのです。
高脂肪食などによる肥満が薄毛・脱毛を引き起こすメカニズム
国内の動物実験研究から、肥満が薄毛や脱毛を引き起こすメカニズムについて明らかになり、権威のある科学雑誌の一つ「Nature」に論文が掲載されました。毛髪を生やす「毛母細胞」は、「毛包幹細胞」と呼ばれる細胞から供給されています。
研究では、高脂肪食を与えられたマウスの毛包幹細胞の中に脂肪が蓄積し、毛母細胞の供給が滞ることが示されました。この影響により、毛が細くなったり、毛が生えなくなったりと脱毛症の進行が確認されました。以上のことから、肥満と薄毛の関連性が科学的にも解明されています。
薄毛を引き起こす2種類の肥満
肥満は原因によって、症候性肥満(二次性肥満)と単純性肥満(原発性肥満)の2種類に分けられます。
症候性肥満
基礎疾患や服用中の薬などによって引き起こされる肥満を、症候性肥満と呼びます。症候性肥満は、以下の4つに分類されます。
- 内分泌性肥満:甲状腺機能低下症などが原因
- 遺伝性肥満
- 視床下部性肥満:間脳腫瘍などが原因
- 薬物による肥満:向精神薬、ステロイドなどの影響
単純性肥満
単純性肥満は、食べ過ぎによる過剰なエネルギー摂取や、運動不足によるエネルギー消費不足が原因で起こります。
肥満の判定基準
肥満の判定基準は国によって異なり、日本肥満学会では体格指数である「BMI:Body Mass Index」が25以上と定義されています。体重と身長から算出するBMIの計算式は以下の通りです。
BMI=体重(kg)÷ 身長(m)2
男女(65歳未満)ともにBMI22の状態が最も疾患が少なく、この値を標準体重としています。例えば身長170cmの場合、標準体重は1.7×1.7×22=63.6kgです
定期健診時に実施されるメタボ診断では、BMIではなく腹囲が用いられています。一方、特定健診・特定保健指導となる判断基準では「男性:腹囲85cm以上またはBMI≧25kg/m2」とされています。
日本人の肥満割合
日本人の肥満の割合について、厚生労働省「令和元年度 国民健康・栄養調査結果」から引用します。肥満者をBMI≧25kg/m2と定義すると、肥満者の割合は、男性が33.0%、女性では22.3%でした。
過去10年間では、女性の肥満率には大きな変化はみられませんが、男性では平成25年から令和元年までにかけて有意な増加が確認されています。特に、男性の年齢別における肥満割合は、40-49歳で39.7%、50-59歳で39.2%と高い割合を示しています。
ガイドラインから読み解く! 肥満を解消する方法
肥満を解消する方法を「肥満症診療ガイドライン2022」からポイントを抜粋して紹介します。
食生活の改善:BMIに応じた摂取エネルギーの設定
肥満を解消するためには、食事療法が基本です。体重を減らし内臓脂肪を減少させることで、肥満に伴う健康リスクの改善が期待できます。減量の目標としては、3〜6カ月で現体重の3%以上の減量が臨床的に意義のある減量とされています。そのためには、摂取エネルギーを制限することが最も効果的な方法です。
25≦BMI<35の方では、1日の摂取エネルギーを「25kcal×目標体重(kg)以下」に設定し、食生活を改善しましょう。具体的な食生活改善としては以下が挙げられます。
- 丼ものや麺類、パンなどの糖質主体の食事ではなく、主食・主菜・副菜・汁物など栄養バランスが取れた定食にする
- 野菜・きのこ類・海藻類など、低カロリーでも満腹感を得られる食事を取り入れる
- 毎食腹八分目にする など
運動:減量が期待できる具体的な目安
肥満を解消するためには、食生活の改善だけでなく、運動も重要な要素です。ただし、運動では体重を大きく減らすことは難しく、肥満の予防や減量後の体重維持に役立つとされています。体重を減少させるための具体的な目安は以下の通りです。
- 1日30分程度(週に150分以上)の有酸素運動で約2〜3kg
- 1日60分以上(週に225〜420分)の有酸素運動で約5〜7.5kg
個人差はあるものの、運動を継続することにより、およそ1年~1年半程度で減量が期待できます。
このように、身体活動・運動量と体重減少には一定の関係があり、効果を得るためには継続的に十分な時間をかけて運動することが大切です。
ジムでのトレーニングやランニング、水泳など定期的に運動することが難しい場合には、普段の生活の中に運動を組み込んでいきましょう。例えば、次のようなものであれば取り組みやすいのではないでしょうか。
- 通勤時に一駅手前で降りて歩く
- エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使う
- 食後の歯磨きをするときに、スクワットやかかと上げをする など
行動療法:体重測定結果のグラフ化、生活日記の導入
行動療法は、減量や減量後の体重維持に効果的であるとされています。行動療法の具体的な方法の一例が、毎日の体重測定結果をグラフ化して、自分で視覚的に確認することです。体重の変動を可視化することで生活リズムの乱れによる体重変化を把握し、自己修正できるようになります。また、体重測定を習慣化する補助的な役割を果たします。
その他にも、「食事」「睡眠」「運動」「通勤」「勤務」「入浴」など、日々の活動にどのくらいの時間を費やしているかを記録する生活日記もおすすめです。これにより、生活習慣の乱れを把握し、改善へのきっかけにつながります。
体重測定結果の管理や生活日記については、有料・無料を問わずさまざまなアプリが出ています。活用してみるのもいいでしょう。
肥満以外の原因による薄毛の可能性
薄毛は、肥満だけでなくAGA(Androgenetic Alopecia:男性型脱毛症)が原因となることもあります。AGAとは、成長期・休止期・退行期からなる毛髪の成長過程「毛周期」において、成長期が短縮し休止期が長くなることで、毛髪が細くなり、抜けやすくなる現象です。原因は男性ホルモンに起因しているとされています。
特に男性ホルモンである「テストステロン」から生成される、より活性の高い「ジヒドロテストステロン(DHT)」がAGAの主な原因といわれています。DHTが毛包にある男性ホルモン受容体に結合することで毛母細胞の増殖が抑制され、成長期が短縮すると考えられています。
肥満を解消し、薄毛が気になる場合は早めの受診を
肥満と薄毛の関連性について、科学的根拠をもとに紹介しました。食べ過ぎなどによる単純性肥満で薄毛に悩んでいる方は、食生活の改善や運動、生活スタイルの可視化など、体重を減らす行動を始めてみましょう。もし自力では難しい場合は、自由診療で減量を助ける薬を処方してもらうこともできます。
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症候性肥満の方は、まずは基礎疾患の治療のために医療機関の受診をおすすめします。
また、薄毛の原因は肥満だけではなくAGAの可能性も考えられます。気になる場合は早めに医師の診察を受けることが大切です。自宅から診療を受けられるオンライン診療という選択肢もありますので、受診を検討してみてください。
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出典
Nature volume 595, pages 266–271 (2021)
Drug Delivery System 24-2,2009 109-116
厚生労働省 令和元年度 国民健康・栄養調査結果の概要
Journal of the American Academy of Dermatology volume70 Issue2,February 2014, Pages 297-302
肥満症診療ガイドライン2022
e-ヘルスネット「BMI」(2024年10月3日取得)
厚生労働省「特定健診・保健指導について」
健康長寿ネット「肥満治療の食事レシピ」(2024年10月3日取得)
慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイトKOMPAS「肥満」(2024年10月3日取得)
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版
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