AGA治療薬で性欲減退やEDに? 副作用とその対処法
男性の薄毛の原因として最も多い男性型脱毛症(AGA)。AGAは男性ホルモンの影響で脱毛が進行する病気です。
AGA治療薬の中には、男性ホルモンの働きをブロックする作用のものがあります。
そのため、「AGAの治療をすると男性ホルモンの働きが減ってしまい、性欲が落ち、EDなどの性機能障害になるのでは」と心配される方も多いのではないでしょうか。
今回は、AGAの治療薬と性欲やEDとの関連性について詳しく解説します。
リビドー減退とAGA治療薬の関係性
インターネットで「AGA 副作用」と検索するとリビドー減退という言葉がでてきます。リビドー減退は性欲低下を表す言葉です。ここではリビドー減退の概要や、リビドー減退とAGA治療薬の関係について解説します。
リビドー減退とはどういう状態?
リビドーとは精神科医であるジークムント・フロイトが提唱した概念で、簡単にいうと「リビドー=性的欲求」の意味で用いられます。
リビドー減退とは性的欲求が減退した状態のことをいいます。リビドー減退という言葉にED(勃起不全)と同じようなイメージを持っている方もいるかもしれませんが、その意味は異なります。リビドー減退が生じると性的欲求が高まらないので勃起しなくなることはありますが、EDの場合は性的欲求があっても十分に勃起しない状態のことも指すので「リビドー減退=ED」ではありません。
リビドー減退が起こる可能性のあるAGA治療薬
AGA治療薬のなかでリビドー減退が起こりうるものとしてフィナステリドとデュタステリドが挙げられます。
フィナステリドとデュタステリドはともに5αリダクターゼ阻害薬と呼ばれる薬です。5αリダクターゼは男性ホルモンの1つであるテストステロンに作用して強力なジヒドロテストステロンへ変化させます。ジヒドロテストステロンは脱毛因子を産生し、脱毛を促進します。
5αリダクターゼ阻害薬であるフィナステリドやデュタステリドは、5αリダクターゼの働きをブロックして脱毛を防ぐ効果があります。
男性ホルモンの働きをブロックするという作用上、男性機能に影響を及ぼす可能性があるという側面もあるため、これらの薬がリビドー減退につながることが懸念されています。
後ほど詳しく解説しますが、実際はフィナステリドとデュタステリドを内服している人でもリビドー減退が起こる割合は低いとされています。
ミノキシジルでリビドー減退は起こらない
フィナステリドやデュタステリドと並ぶ主なAGA治療薬であるミノキシジルでは、リビドー減退は起こるのでしょうか。
結論から言うと、ミノキシジルでリビドー減退は起こりません。ミノキシジルは血管を拡張させる作用があり、頭皮への血流を増加させ髪の毛の成長を促す毛乳頭細胞を活性化させることで発毛を促す効果があるとされています。
副作用としてめまいや頭痛、動悸、血圧低下がありますが、フィナステリドやデュタステリドと異なり男性ホルモンに働きかける作用はないため、ミノキシジルでリビドー減退は起こらないといえます。
AGA治療薬でリビドー減退が起こる確率はわずか5%未満
フィナステリドとデュタステリドはリビドー減退が起こりうるとされていますが、実際にリビドー減退を起こす割合はどれくらいでしょうか。
プロペシア(フィナステリド)のリビドー減退発生頻度
フィナステリドの先発品であるプロペシアの添付文書によると、臨床試験でプロペシアを内服した人のなかでリビドー減退が起こった人の割合は1.1%(276人中3人)でした。
ザガーロ(デュタステリド)のリビドー減退発生頻度
デュタステリドの先発品であるザガーロの添付文書によると、臨床試験でザガーロを内服した人のなかでリビドー減退が起こった人の割合は3.9%(557人中22人)でした。
このように、フィナステリドやデュタステリドを内服してもリビドー減退を認める割合は非常に少ないことがわかります。
リビドー減退が副作用で現れた場合の対処法
AGA治療薬はリビドー減退の大きなリスクとはならないと説明しましたが、副作用として現れる可能性は0%ではありません。
ここでは実際にリビドー減退が起こってしまった場合に、どのように対処をすればいいのか解説します。
まずは担当の医師に相談
AGA治療を開始してリビドー減退を感じるようになったら、まずは治療薬を処方した担当の医師に相談しましょう。
自己判断で薬を中止してしまうと、再度抜け毛が増加してしまう恐れがあります。
リビドー減退が認められる場合は薬の量を調整したり、ほかの治療を検討したりする方法があります。自己判断で中止せずに、医師に相談することをおすすめします。
ED治療薬を併用する方法も
AGA治療中にリビドー減退が起こってしまったときの対処法の1つとして、ED治療薬を併用する方法があります。
EDの治療薬は陰茎の血管を拡張させて勃起をサポートする薬です。ED治療薬は内服薬ですが、AGA治療薬であるフィナステリドやデュタステリドと一緒に内服しても問題ありません。しかし、内服する種類が増えると肝臓への負担が増加する可能性もあるため、ED治療薬を内服できないもしくは注意が必要な方もいらっしゃいます。
そのため、個人輸入などによる自己判断でのED治療薬の使用はおすすめしません。ED治療薬を使用していいのかどうかを医師に確認してから内服するようにしましょう。
AGA治療薬で起こる可能性のあるそのほかの性機能障害
AGA治療薬で起こりうる代表的な副作用としてリビドー減退を解説してきましたが、そのほかにも起こる可能性がある性機能障害がいくつかあります。ここではリビドー減退以外の副作用について紹介します。
勃起機能不全
ED(勃起機能不全)は性機能障害のなかでも有名で、耳にしたことがある方も多いと思います。EDの症状は勃起しない、もしくは勃起しても十分な硬さにならない、すぐに柔らかくなってしまい、性行為時に支障が出る状態のことをいいます。
リビドー減退により性的欲求がなくなって勃起しないということもありますが、EDの原因はそれ以外にも
- 加齢や生活習慣病によるもの
- ストレスなどの精神的な要素によるもの
- 頻度は少ないですが薬剤の影響
といったものがあります。
AGA治療薬の副作用としてEDを気にされる方も多くいらっしゃいますが、実際の副作用の頻度はどれくらいなのでしょうか。
プロペシア(フィナステリド)のED発生頻度
臨床試験において、プロペシアを内服した人のなかでEDが起こった人の割合は0.7%(276人中2人)でした。
ザガーロ(デュタステリド)のED発生頻度
臨床試験において、ザガーロを内服した人のなかでEDが起こった人の割合は4.3%(557人中24人)でした。
これらの結果から、フィナステリドやデュタステリドの副作用としてのEDの割合は、リビドー減退同様に非常に少ないことがわかります。
射精障害
射精障害は性機能障害の1つで、EDと同様AGA治療薬との関連性を気にされている方が多い症状です。射精障害は、勃起することはできますが射精ができない状態のことをいいます。射精障害の主な症状として、精液量の減少が挙げられます。そのほかに早漏、遅漏、マスタベーションのみでしか射精できないなどの症状があります。
AGA治療薬による射精障害の副作用はどれくらいの割合で生じるのでしょうか。
プロペシア(フィナステリド)の射精障害発生頻度
臨床試験において、プロペシアを内服した人のなかで精液量減少が起こった人の割合は1%未満でした。
ザガーロ(デュタステリド)の射精障害発生頻度
臨床試験において、ザガーロを内服した人のなかで精液量減少が起こった人の割合は1.3%(557人中7人)でした。
フィナステリドやデュタステリドの副作用としての射精障害の割合についても、リビドー減退、EDと同様に極めて少ないことが見て取れますが妊活や性生活に影響する可能性はあるので知っておくことは重要です。
※妊活中のAGA治療については、以下の記事もあわせてご確認ください。
妊活中にフィナステリドを服用しても問題ない?
AGA治療薬でリビドー減退が起こる可能性は低いが、気になる症状があれば医師へ相談を
今回はAGA治療薬の副作用として多くの方が心配している性機能障害、特にリビドー減退について解説しました。
薬剤のデータからは、AGA治療によるリビドー減退などの性機能障害が出現する可能性は低いため、副作用を過度に気にしすぎる必要はないと思われます。
万が一、リビドー減退などの症状がみられた場合は、治療方針についてかかりつけの医師に相談し、適切な対処をすることが大切です。
出典
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