5αリダクターゼ(Ⅰ型・Ⅱ型)とAGAは関係ある?
AGA(男性型脱毛症)のことが気になっていろいろと情報を調べているうちに「5αリダクターゼ」という言葉を知った方も多いと思います。今回の記事では5αリダクターゼのⅠ型・Ⅱ型の違いや、5αリダクターゼとAGAとの関係性について、医師の辛島先生に解説していただきました。
AGAのいわゆるⅠ型・Ⅱ型とは
AGAにⅠ型・Ⅱ型があると思われている方がいるかもしれませんが、AGAにそのような分類はありません。
AGAを段階別に分ける、ハミルトン・ノーウッド分類と呼ばれるものがありますが、これはⅠ型・Ⅱ型という分け方とは異なるものです。
AGAにⅠ型・Ⅱ型という分け方があると思われている方は、もしかしたら、5αリダクターゼにⅠ型とⅡ型があるということと混同されているのかもしれません。
5αリダクターゼのⅠ型とⅡ型については、のちほど解説します。
AGAにまつわる誤った言説
AGAにⅠ型・Ⅱ型があるという誤解のほかにも、AGAに関して誤った言説があるようです。いくつかご紹介します。
AGAの治療薬を飲むと薄毛がより悪化する?
実際に患者さんから受ける質問で多いのが「AGAの治療薬の服用を治療途中でやめてしまったら、AGAがかえって悪化するんですよね?」というものです。
これは因果関係のない噂だといってよいでしょう。
AGAの治療薬は、進行を防ぐためのものです。AGAは進行性のものなので、治療薬をやめて放置するとどんどん進行します。さらに、時間が経過することで加齢も重なり、AGAが進み、それがこの噂につながっていると思われます。
AGAの治療薬によってAGAが悪化するということはありません。
AGA治療は男性機能の低下を覚悟しなければならない?
これも誤った言説で、時々、「性欲の減少と引き換えにAGA治療をする」と意気込んでクリニックに来る患者さんがいらっしゃいます。
しかし、AGA治療薬によって、必ずしも男性機能が低下するということはありません。
おそらく、AGA治療薬であるフィナステリドとデュタステリドの副作用として、男性機能の低下があるという印象が強いのだと思いますが、この副作用が起こる確率は低いです。AGA治療をしている全員に出る副作用ではありません。
とはいえ、副作用が出る確率は0%ではないので、もし副作用を疑うような症状が出たら医師の判断を仰ぐことをおすすめします。「AGA治療=男性機能の低下」ではないということはおさえておきましょう。
AGAはストレスと遺伝が原因?
AGAの原因として、ストレスや遺伝を思い浮かべる方も多いようです。
たしかに、どちらもAGAの原因の一つになることはあります。しかし、AGAは複合的な要因によって引き起こされます。なにか一つのことが原因となって引き起こされるのではなく、さまざまな原因があわさった結果起こるものと考えられています。
AGAに、明確な唯一の原因というものはないといってよいでしょう。
5αリダクターゼ(Ⅰ型・Ⅱ型)とは
AGAを引き起こす直接的な要因は、5αリダクターゼという酵素の作用によるものです。5αリダクターゼはⅠ型とⅡ型に分けられますが、どちらも、テストステロンをDHT(ジヒドロテストステロン)に変える働きがあります。
テストステロンは男性ホルモンの一種で、骨格や筋肉量、生殖機能の向上などに関わっています。5αリダクターゼによってテストステロンからDHTが産出され、それがアンドロゲンレセプターと結合することによって毛乳頭細胞の活動が弱まり、AGAが発症・進行します。
5αリダクターゼはⅠ型もⅡ型も毛乳頭細胞に存在しています。Ⅰ型とⅡ型の分類基準は、体内で分布している範囲にあります。
5αリダクターゼⅠ型は、皮脂腺を中心にまんべんなく全身に分布しています。Ⅱ型も全身にありますが、特に頭頂部・前頭部や脇、前立腺などに多いのが特徴です。
AGAの発症を防ぐためには、この5αリダクターゼの働きを抑えることが重要です。
人間の体内には約5,000種類の酵素があるといわれています。酵素は体内のさまざまな化学反応において触媒として機能し、なかでも5αリダクターゼはAGAを引き起こす化学反応を手助けします。
酵素はアミノ酸配列でできており、その配列は人間の遺伝子情報に刻まれています。また、栄養不足だと体内の酵素が減ることもあります。加えて、酵素は補酵素と呼ばれるビタミンや葉酸がないと作用しないといわれています。
5αリダクターゼはAGAを引き起こす酵素ですが、体内に存在するということは、人間にとって必要な酵素であると考えられます。特に、男性の生殖に関わる重要な酵素であるといえます。
5αリダクターゼⅠ型とⅡ型でAGA治療法は異なる?
5αリダクターゼⅠ型とⅡ型で、AGAの治療法が異なるということはありません。
5αリダクターゼの働きを抑制するための薬として、フィナステリドとデュタステリドがあります。
フィナステリドは、5αリダクターゼⅡ型に作用します。デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方に作用する薬です。一般的に、フィナステリドをまずは試してみて、期待していた効果がなかった場合にデュタステリドを使うことが多いようです。
5αリダクターゼの働きを抑えることが重要
この記事では、5αリダクターゼⅠ型・Ⅱ型とAGAの関係を中心にお伝えしました。AGAについて調べている人の中には、5αリダクターゼのⅠ型・Ⅱ型という分類をAGAの分類だと混同されている方もいるようですが、AGAにはⅠ型・Ⅱ型という分け方はありません。
5αリダクターゼの働きを抑えることによって、AGAの発症を防ぐことができます。予防したい方、進行を抑えたい方はぜひクリニックを受診し、AGA治療薬を試してみてはいかがでしょうか。
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