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コラムカテゴリ男性AGA

「M字はげ」の原因・診断基準・対策を医師が解説

2024/03/11
監修:真壁 聖

「最近、髪の毛が薄くなっている」「特におでこがM字に後退している気がする」と心配されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は気にされる方も多い「M字はげ」にフォーカス。医師の真壁先生に、M字はげの前兆や原因、予防法などについて解説いただきました。

いわゆる「M字はげ」とは


はじめに、私自身はあまり「M字はげ」という言い方をしません。「はげ」という言葉がポジティブなものではないため、クリニックで患者さんに伝える時は、「M字」と表現したり「M字の薄毛」と伝えたりしています。

しかし、この記事では、「M字はげ」という呼称が一般的であるという点を重視し、あえてわかりやすくこの言葉を使ってお伝えします。

M字はげはAGAによって起こる

M字はげは、AGA(男性型脱毛症)の進行パターンを識別するために使われる「ハミルトン・ノーウッド分類」による分類の一つです。

AGAとは、「androgenetic  alopecia」(アンドロジェネティックアロペシア)の略称。androは男性、geneticは遺伝という意味があります。つまり、男性ホルモンと遺伝が関連した脱毛症のことをAGAといいます。

AGAにはパターンがある

AGAを疑いクリニックを受診される男性の多くが、おでこの生え際であるM字部分の薄毛を気にされています。具体的に、下記のような症状を訴えられる方が多いです。

  • 数年かけて徐々におでこが広くなってきている
  • 髪のコシがなくなってきた
  • お風呂に入っているとき、髪の毛が濡れた状態で頭皮が透けて見える
  • 髪のセットがしづらくなってきた
  • 枕に短い髪の毛の抜け毛が目立つようになった

以上の症状が見られる方のうち、円形脱毛症や脂漏性皮膚炎など頭皮の病気の可能性を除いたうえで、症状が急ではなく徐々に進行している場合はAGAを強く疑います。

国際的なAGAの診断基準では、薄毛部分に2割以上の軟毛化があればAGAを疑います。

M字はげはAGAの脱毛パターンの一種

AGAでは前頭部の髪の生え際がM字型、または頭頂部がO型に薄くなり、その範囲が徐々に広がっていくという特徴があります。この前者の症状がM字はげと呼ばれています。

なぜこのような脱毛パターンになるのかというと、AGAの発症に関与している男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)は男性ホルモン受容体と呼ばれる部位に作用することがわかっていますが、この男性ホルモン受容体は頭頂部や前頭部の毛髪に多く存在しているからです。

側頭部と後頭部にはこの男性ホルモン受容体が存在しないので、最後まで薄毛になりません。

20代で「M字はげ」が生じる原因

20代の男性でクリニックを受診され、M字はげの相談に来られる方は確かにいます。しかし、「20代だからM字はげになる」「M字はげは20代に多い」ということではありません。

M字はげは鏡などで目につきやすいので、見た目を気にされる方にとっては気づきやすいAGA の脱毛パターンといえます。逆に、O字の場合はカメラなどで自分の後を姿を見たときに、初めて気づく方が多いようです。

日頃からできる「M字はげ」対策

ストレスや睡眠不足、食生活の乱れが、M字はげを含めたAGAに悪影響を与えるという医学的根拠はありません。しかし、それらが「正常なヘアサイクル」に悪影響を与える可能性はあるといえます。

具体的には、ストレスがかかると脳の下垂体からストレスホルモン(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が放出されますが、このホルモンは毛髪の成長を阻害する原因の一つです。

また、睡眠不足は成長ホルモンの分泌促進に欠かせないホルモンであるメラトニンの分泌リズムを乱してしまいます。メラトニンが十分に分泌されないと、毛髪の成長に悪影響を与えます。食生活の乱れでも、毛髪に必要な亜鉛や鉄分が不足すると毛髪の成長は阻害されてしまいます。

「M字はげ」の治し方・治療法

AGA治療について、日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」によると、内服薬としてフィナステリドあるいはデュタステリド、外用薬としてはミノキシジル、外科的治療として自毛植毛を推奨しています。

これらの方法を適切に組み合わせ、副作用に気をつけながらAGA治療を継続的に行います。それぞれの治療法について詳しく見ていきましょう。

フィナステリド、デュタステリド

AGAを発症すると毛髪が成熟しないまま成長を終えてしまい、軟毛化と呼ばれる細い毛や短い毛が全体的に増え、抜け毛の増加や髪全体のボリューム減少につながっていきます。

毛髪の成長が止まってしまうことには、男性ホルモンの一種であるDHTが関与しています。このDHTの発生を抑えるのが内服薬であるフィナステリドとデュタステリドです。

この2つの薬は、もともと前立腺肥大症の治療で使われていましたが、使用していた患者さんの抜け毛が改善したという報告を受けて調べてみたところ、AGA治療に有効であることが確認されました。

国内のAGA治療薬として唯一承認を受けている薬です。

ミノキシジル

ミノキシジルはもともと血圧を下げる降圧薬としてアメリカで開発された薬です。使っていた患者さんの体毛が濃くなったという報告が複数あり、その中で、脱毛症状で薄くなった頭皮にも発毛を認めることが確認されたため、日本でもAGA治療に使われるようになりました。

ミノキシジルの成分が、毛包(毛根)にある毛母細胞に直接作用することで、発毛効果を発揮します。

当初は外用薬として薬局で購入可能な形で導入されましたが、現在は内服薬もあります。内服薬の場合は医師の処方が必要ですが、ミノキシジルの内服薬は血管拡張作用に伴う動悸やむくみ、頭痛などを認めることが少なからずあることから、国内ではAGA治療薬としては認可されていません。国内未承認薬としての取り扱いになります。

自毛植毛

AGAの脱毛症状は、男性ホルモン受容体が存在する頭頂部や前額部に表れます。逆に言えば、側頭部や後頭部には男性ホルモン受容体が無いため症状は現れません。これがAGAに一定のパターンがある理由です。

この特徴を利用して、男性ホルモン受容体が存在しない側頭部や後頭部の毛髪を、頭頂部や前頭部に移植するのが「自毛植毛」です。

M字はげ治療の現状

前額部のM字部分は、頭頂部のO型部分と比較して治療効果が出にくい場所です。

AGAが進行し後退してしまった前額部に対して、フィナステリドやデュタステリドを用いることで現状以上の進行を防ぐことはできますが、後退してしまった状態を改善することは難しいです。

また、ミノキシジルで発毛する毛は本来の髪の毛ではなく、体毛が濃くなった毛なので、M字の薄毛を気にされる方の満足度は低い傾向にあります。

治療には個人差がありますので、効果が著しく表れることもあり得ることは付け加えておきます。

 

M字はげが気になる方はクリニックを受診

M字はげを含むAGAは進行性です。放っておくと悪くなることはあってもよくなることはありません。そして、後退したおでこが元に戻ることもないのが実情です。

しかし、早めに正しい治療を行うことで進行スピードを緩めることはできるかもしれません。少しでも気になることがあれば、AGA専門のクリニックを受診されることをおすすめします。

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