自毛植毛治療とは? 仕組みやAGAにおける注意点を解説
AGAの症状が気になり、治療や植毛を検討されている方もいるかもしれません。今回の記事では、その中でも自毛植毛について医師の三上先生に解説していただきます。どのような仕組みなのか、注意点についても詳しく話を伺いました。
そもそも自毛植毛とは
自毛植毛とは、人工毛ではなく、自毛を別の場所から移植する方法です。
80年代までは人工毛を植毛する方法が使われていました。しかし、頭皮の炎症や異物性の肉芽腫(にくげしゅ:炎症によってできるこぶ)が多数報告され、アメリカでは80年代に禁止されています。今は人工毛の植毛はほとんど行われていません。
人工毛でトラブルが多数報告されたので、それを回避するため90年代くらいから自毛植毛が急速に進みました。
自毛植毛の種類
自毛植毛には大きく分けて3つの方法があります。
皮弁法(フラップ法)
後頭部の皮膚片を、髪の毛が薄くなった前頭部などに引っ張ってきて縫い付ける方法です。完全に皮膚を切り離さずに、一端を頭部につなげたままねじるようにして、薄くなった部分に持っていきます。
皮弁法は、元々、やけどなどで皮膚に欠損があった場合に使う方法で、血液や血流、静脈や動脈が含まれる皮膚を生きたまま移植するイメージです。「フラップ」はパタパタと動くものを表す動詞で、皮膚を完全に切り離さずに行うのでフラップ法と呼ばれます。
この方法は、医師にとって技術の習得が難しく、血流が悪くなるとその部分の組織がだめになってしまうので、リスクも大きく、最近はあまり行われていません。
スカルプリダクション法
薄毛が進行している部分の頭皮を切り去って、面積を狭くする方法です。面積として切除できる範囲が制限されていること、皮膚が引きつることなどの理由により、この方法も最近はあまり行われていません。
遊離移植法
近年、最も多く行われているのがこの方法です。組織を小さく切り取って植え付けるので、血流を保つ必要がありません。組織ではなく顕微鏡レベルで頭皮の一部を切りとり、細長い帯状のものを切り出す手術になります。
毛包ごとにユニットを作り、田植えのように一本一本の毛包ごとの髪の毛を植え付けていくイメージです。根の部分から自然に栄養が行き渡るようになるので、9割ほどが生着するといわれています。外科的リスクが少なく、うまく生着すれば大きなメリットになります。また、毛の本数の多いユニットを薄毛が進んでいる場所に持ってくることができるので、見た目にも自然です。
ただし、移植した髪の毛が一度抜けた後、次の世代が生えてくるかどうかは未知数です。
自毛植毛の特長
自毛植毛には、うまく生着するとそのまま髪の毛を維持できるという特長があります。
最長で30年生着したケースもあるようです。5〜6回は同じ場所に植毛できるので、うまく生着すれば髪の毛の心配をしなくて済み、対処法としての薬物療法を続ける必要もなくなります。
番外編:人工毛を結びつける方法もある
これは植毛ではないのですが、人工毛を既存の髪の毛に結びつける方法もあります。地肌に植え付けないため、副作用や痛みがないというメリットがあります。
ただ、植え付けるのではなく結びつけるので、ある程度の寿命しかなく、洗っている時などに抜け落ちてしまうこともあります。
AGA治療における自毛植毛
AGA治療において、以下のようなケースで自毛植毛が選択されます。
薬による治療で満足できなかった
残念ながら、フィナステリドやデュタステリド、あるいはミノキシジルを使っても効果が実感できなかった場合に選択される可能性があります。
一気に髪の毛を増やしたい
AGAの治療薬による対処は、効果が見られるまでに月単位、年単位の時間がかかることがあります。徐々にではなく一気に増やしたい場合に、自毛植毛に踏み切るケースがあります。
効果が感じられるまで薬と同時進行
薬の効果が出るまでの数カ月間、それまでの期間をカバーしたい場合に、薬と同時進行で自毛植毛を選ぶ方もいます。
自毛植毛の注意点とデメリット
自毛植毛にはいくつかの注意点やデメリットもあります。
手術の際、麻酔を使う
局所麻酔と全身麻酔のどちらで手術するかにもよりますが、全身麻酔の場合はさまざまなリスクがあるので、手術前の検査で肝臓の機能などについて調べてから行うことになります。
移植する際に切り取るのは幅5ミリ、長さ3センチ程度なので、そこまで大きな手術ではありません。顕微鏡手術もリスクの高いものではなく、術後も感染症対策として抗生物質を飲む程度です。
ただ、ある程度の時間全身麻酔を使うとなると、やはりリスクも生じます。症例数の多い経験豊富なクリニックを選ぶことをおすすめします。学術的な論文を検索して、論文を書いた先生が在籍するクリニックを選ぶのもひとつの方法です。
次世代の髪の毛が生えてくるかは未知数
自毛植毛をした直後は髪の毛が増えますが、その髪の毛が抜けたあとに次世代の髪の毛が生えてくるかは分かりません。
効果が実感できるのは半年以降後
次世代の髪の毛が生えた場合、それを実感できるのは半年以上経過した時期です。逆に、最初に植毛した髪の毛が半年以内に抜けてしまうケースもあります。
10年後の経過
自毛植毛の際、毛の損傷さえなければ、9割ほどは生着します。しかし、移植後も次世代の髪の毛が成長期を経て伸び、生着し続ける確率は10%程度といわれています。
次世代のへ引き継ぎがうまくいけば、地肌が見えない程度の毛量を維持できる方もいます。経過に関しては個人差もあり、植毛の技術的な問題も影響してくるので、自毛植毛の10年後の経過については一概にはいえません。
ただ、少し時間をかけてでも腕のよい医師を探し、手術してもらうことで、10年後の経過に影響することもあります。経験豊富な医師を見つけることが重要です。
また、AGA治療を途中でやめてしまった場合、自毛植毛した部分だけ髪が残る状態となってしまうため、注意が必要です。
費用と治療に必要な期間
自毛植毛の費用や治療期間について、おおよその目安をお伝えします。
自毛植毛の費用
費用はクリニックによってばらつきがありますが、だいたい150万円前後であることが多いようです。
効果の実感には個人差をはじめ、さまざまな要因があるので一概にはいえませんが、もし自毛植毛で生着して髪の毛を維持することができるなら、悪い選択肢ではないと思います。
ただ、薬物療法で効果を実感する方もいるので、まずは薬物療法で様子を見るというのがAGAの治療においては一般的です。
治療に必要な期間
自毛植毛の場合、一度手術をするとその後は経過観察になるので、治療期間はそれほど長くありません。ただし、効果が実感できるのが術後半年〜1年後なので、気長に待つ覚悟が必要です。
自身に合ったAGA治療を選びましょう
医療技術の発達に伴い、AGA治療にもさまざまな選択肢が生まれました。自毛植毛もそのひとつです。
治療を検討する場合は、信頼できるクリニックを受診し、医師に相談しましょう。AGA治療に対する効果の実感には個人差があります。まずは、自身のAGAの進行度などを確認しましょう。その上で自毛植毛を選ぶ場合は、クリニック選びが重要です。
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