AGAにサプリは効くの? 薄毛に期待できる成分と効果的な摂取方法
薄毛に悩んでいるけれど、医療機関を受診するのは抵抗があり、まずはサプリメント(以下、サプリ)で対策したいと考えている方も多くいるでしょう。一方で「本当にAGAに効果があるのか」「どのサプリを選ぶのがいいのか」と悩んでいるケースも多いのではないでしょうか。
今回は、AGAサプリによく使用されている成分や期待できる効果とともに、飲み方や注意点を紹介します。サプリの摂取を迷っている方は参考にしてみてください。
AGAサプリに「発毛」効果はない
サプリには、新たに髪を生やす「発毛」効果はありません。発毛効果が認められているのは「医薬品」であり、サプリは一般食品に分類されている、いわゆる「健康食品」です。サプリを摂取すると不足した栄養素を補充することができるため、頭皮環境を整える効果が期待されています。
サプリに期待できる「育毛」効果とは?
「発毛」と「育毛」の違いは、ガイドラインなどで厳密に定義されているものではありません。
しかし、一般的に
- 「発毛」は毛髪を作り出す毛包が活性化し、新たな髪を生やすこと
- 「育毛」は髪が生えている頭皮環境を整えること
を意味しています。
サプリに期待できる効果は、不足している栄養素を補充し、髪が育つ土台作りを支えることであり、「発毛」ではなくあくまで「育毛」のサポートです。
AGAサプリは毛髪環境を整えるためのサポート役
サプリに発毛効果がないからといって、摂取する意味がないわけではありません。薄毛の主な原因が栄養バランスの偏りである場合には、不足している栄養素をサプリで補充することは簡便な方法です。適したサプリを活用し、頭皮や髪が健康に育つ環境作りを意識しましょう。
AGAサプリに使用される代表的な成分
サプリを選ぶ際には、必要な栄養素が十分に配合されているものを選びましょう。どの成分にどんな役割があるかをこのパートで紹介しますので、必要なサプリを選ぶ参考にしてみてください。
亜鉛:欠乏すると脱毛となり、補充すると改善する
亜鉛(Zn)は、毛髪に必要な成分です。亜鉛が欠乏すると、食欲不振や味覚異常など多彩な臨床症状が現れますが、その他の症状の一つに「脱毛」もあります。また亜鉛が不足している人が亜鉛を内服すると、それらの臨床症状が改善したと報告されているため、毛髪に必要な成分であると考えられます。
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ノコギリヤシ:AGAの原因ホルモンを抑制
ノコギリヤシの有効成分はテストステロン(男性ホルモン)からAGAの発症に関係するジヒドロテストステロン(DHT)への変換を抑制するとされています。これは、AGA治療薬のフィナステリドと同様の作用メカニズム(5α還元酵素の阻害)ですが、ノコギリヤシとフィナステリドは同一成分ではなく、同等の効果は期待できません。
ノコギリヤシとフィナステリドを直接比較した一つの研究では、ノコギリヤシはAGAの改善をもたらしましたが、フィナステリドの方が有効性が高かったと報告されています。
ケラチン加水分解物:髪の主成分
毛髪の80〜90%は、「ケラチン」と呼ばれるタンパク質で構成されており、ケラチンは18種類のアミノ酸からなる物質です。育毛のためには、18種類のアミノ酸を食事から摂取することが理想的ですが、継続的に摂取するのは難しい方もいるでしょう。
そこで、「ケラチン加水分解物」をサプリで摂取すると毛髪成分の補給が可能となります。実際にケラチン加水分解物を服用すると、頭皮の毛細血管の血流改善が認められたとの報告があります。
リジン:ケラチンを構成する必須アミノ酸
リジンは、ケラチンを構成する必須アミノ酸です。必須アミノ酸とは、体内で合成できないアミノ酸であり、食事やサプリで摂取する必要があります。
リジンの働きとして、健康な頭皮と毛髪に欠かせないコラーゲンの合成促進や成長ホルモンの分泌促進などが期待されています。
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シスチン:ケラチンを構成する必須アミノ酸
シスチンもケラチンを構成する必須アミノ酸です。ケラチンのアミノ酸組成では、16.6%〜18%がシスチンとされています。また、L-リジンと同様に必須アミノ酸であり、食事やサプリメントからの摂取が必要です。栄養バランスが良い人と比較すると、栄養バランスが崩れている人は毛髪のシスチン含量が低いと報告されています。つまり、栄養バランスの取れた食事を摂ることで、健康的な毛髪が維持されると考えられます。
ビタミン類:頭皮環境を正常に保つ
ビタミン類は、皮膚など人体の機能を正常に保つために必要な栄養素です。体内ではほとんど合成できないため、食事やサプリメントから摂取する必要があります。ビタミンには水に溶ける水溶性ビタミンと、水に溶けない脂溶性ビタミンの2種類があります。
ビタミンB群やビタミンCの水溶性ビタミンは、余分なものは尿として排出されますが、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの脂溶性ビタミンは脂肪組織や肝臓に蓄積されるため、過剰摂取には注意が必要です。食事と同様に、ビタミン類もバランス良く摂取する必要があります。
イソフラボン:5α還元酵素を阻害する
イソフラボンは、5α還元酵素を阻害する作用を有しています。5α還元酵素とは、テストステロンをDHTに変換する酵素です。イソフラボンを服用することでDHTの生成を抑制し、抜け毛を予防する効果が期待できます。
サプリを効果的に摂取するためのコツ
サプリを効果的に活用するためには、食事と同様にバランス良く摂取する必要があります。また量を守ったり、飲むタイミングを考慮したり、飲み合わせに注意したりとコツがあります。この章では、効果的に摂取する3つのコツを紹介します。
【1】摂取量を守る
サプリを過剰摂取すると体調不良になる可能性があるため、摂取量を必ず守りましょう。具体的な症状は、肝臓や腎臓の異常、お腹の不調、脱水、精神状態の異常などです。
また、脂溶性ビタミンであるビタミンEの過剰摂取によって出血性脳卒中の発症率が高くなるという報告があります。その他にも、喫煙者がベータカロテンを過剰摂取すると、肺がんの発症率が高くなるとされています。これらのように、予期せぬ有害事象を起こさないためにも、摂取量を守ることは大切です。
【2】飲むタイミングは水溶性・脂溶性を考慮する
サプリは食品扱いであり、基本的にいつ飲んでも差し支えありません。ただし脂溶性の成分は、食事の油分と混ざり吸収率がアップするため、脂溶性のサプリは食後に摂取すると吸収が良くなるとされています。とはいえ、ご自分のお好きなタイミングで問題ありません。
【3】飲み合わせに注意する
サプリの飲み合わせにも注意が必要です。複数のサプリを飲んでいる場合、同じ成分が入っていて、気づかないうちに過剰摂取となる可能性もあります。
また、サプリと医薬品との相互作用により、医薬品の体内への吸収が増加したり、減少したりと期待されている効果と異なる事象が発生する可能性もあります。特に薬との飲み合わせが心配な場合は、自己判断せず医師や薬剤師に相談しましょう。
AGAによる薄毛改善には医療機関の受診を
薄毛対策で大切なのは、生活リズムを整えてバランスの良い食事を摂ることです。不足している栄養素をサプリで補充することは重要ですが、過剰摂取や飲み合わせなど注意しなければならないこともあります。
また、最初に述べたように、サプリに期待できるのはあくまでも「育毛」のサポート効果であり、新たな髪の毛を生やす「発毛」効果はありません。AGAによる薄毛を改善したい方は、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。
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出典
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厚生労働省 健康食品の正しい利用法(2024年8月23日取得)
国立研究開発法人 基礎基盤・健康・影響研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報(2024年8月23日取得)
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