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フィナステリド(プロペシア)はずっと飲み続けていて大丈夫?

2024/05/13
監修:三上 修

男性型脱毛症(AGA)の治療薬フィナステリドは、日本では2005年に発売され、長く使っていらっしゃる方も多いと思います。「長く使っている間に効果が下がってきた」「ずっと飲んでいて大丈夫なのか」と感じている方も中にはいるのではないでしょうか。今回の記事では、実際のところはどうなのかについて解説します。

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フィナステリドを長く使っていると効かなくなる?

フィナステリドに限らず、「薬を飲み過ぎると効かなくなってくるからあまり飲み過ぎない方がいい」といったような話は、ときどき聞くことがあるのではないでしょうか。薬が効かなくなる“耐性”は、すべての薬で起こるわけではありません。もう少し詳しく説明していきましょう。

薬が効かなくなる”耐性”とは

”耐性”は、薬を繰り返し長期に使用することにより、薬が体内にある状態に体が慣れてしまい、薬に体が反応しなくなってしまうことです。

耐性が起こるメカニズムの一つは、薬の代謝が速くなることです。

代謝とは、体内に入った薬がずっと効き続けることがないよう、薬を分解する体のしくみのことです。薬の種類によっては、繰り返し長く使っていると、この代謝が進みやすくなることがあります。薬が速く代謝されれば、その分、体内に存在する有効な薬の量が減ってしまい、効果も下がってしまいます。

■薬の代謝イメージ

耐性が起こるもう一つのメカニズムは、薬が効果を発揮する際に結合する受容体が変化することです。

薬を繰り返し、長く使い続けていると、この受容体の数が減ってきたり、あるいは、薬と受容体の結合力が弱くなってきたりすることがあります。薬は受容体に結合しないと効果を発揮できませんので、やはり効果が下がってしまいます。

感染症で使われる抗生物質や癌治療薬でも”耐性”が起こりますが、こちらの耐性は、病原体や癌細胞が薬より強くなってしまう状態を指し、上記の”耐性”とは異なります。
では、フィナステリドで“耐性”は起きるのでしょうか。

フィナステリドで”耐性”は報告されていない

フィナステリドは2005年に発売され、日本では最も長く使われているAGA治療薬です。

AGAの日本人801人が5年間フィナステリドを使った臨床試験、532人が10年間フィナステリドを使った臨床試験のいずれの試験でも継続した効果が認められています。
AGAの日本人801人が5年間フィナステリドを使った臨床試験では、99.4%の人で改善が認められました。また、AGAの日本人532人が10年間フィナステリドを使った臨床試験では、91.5%の人で改善し、99.1%の人でAGAの進行が止まりました。

これらの試験では、5年間または10年間にわたってほぼ安定した効果が示されており、フィナステリドでは前述したような“耐性”は起こらないものと考えられます。
※「Yoshitake T, et al. J Dermatol. 2015;42(7):735-738.」及び「Yanagisawa M, et al. Clin Res Trials 5」を参考に作成

フィナステリドが“効かなくなってくる”のはなぜ?

それでも長く使っていらっしゃる方の中には、最近効果が下がってきたと感じている人はいるのではないでしょうか。このパートでは、フィナステリドはどんな特徴を持ったAGA治療薬なのかを解説し、“効かなくなってくる”理由を探っていきます。

そもそもフィナステリドはどんなAGA治療薬なの?

フィナステリドは1日1回飲むことで、AGAの進行を遅らせることができるAGA治療薬です。飲み始めてから1~3カ月程度で効果が表れ始め、ほとんどの人が6カ月くらいで効果を実感できるようになります。

飲むのをやめると1年後には元の状態に戻ってしまうことが確認されていますので、効果を実感するためには、しっかりと毎日飲み続けることが大切です。効果が感じられない原因は、実は飲み忘れかもしれません。

大丈夫だと思っている人でも、仕事が忙しい時やお酒を飲む機会が増える時期は要注意です。効果が感じられなくなってきたと思っている方は、一度、薬をきちんと飲んでいるか確認してみてください。確実に飲めるよう、歯磨きや洗顔といったルーティンに合わせて飲む習慣をつけるようにするなど工夫してみましょう。

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フィナステリドの効果が感じられないのはどんな場合?

フィナステリドは効果が確認されているAGA治療薬ですが、効果を感じられないことはあるのでしょうか。もし感じられないとすれば、それはどんな場合でしょう。

まず、どんな薬でも効果の表れ方は人によって違います。

フィナステリドは、以下の場合に効果が表れやすいことが確認されています。

  • 若い時から薬を飲み始めた場合
  • AGAがあまり進んでいない場合

ですから、高齢の方やAGAが進んでいる場合は効果を実感しづらいことがあるかもしれません。

また、一部の患者さんでフィナステリド服用中に効果が下がったように見え、AGAのタイプによっても差があったという報告もあります。

  • 前頭部から頭皮全体の毛髪が少なくなるタイプ
  • 頭頂部の毛髪が少なくなるタイプ

これはフィナステリドで発毛した毛髪が、同じ周期で抜け落ちることによるものと考えられています。

フィナステリドを長く使っても大丈夫?

日本で行われた1年間のプラセボ(有効成分を含まない偽薬)を対照とした二重盲検比較試験*における副作用は、フィナステリド1mg群(139例)で5.0%(7例)、0.2mg群(137例)で1.5%(2例) プラセボ群(138例)で2.2%(3例)でした。

■プラセボ対照二重盲検比較試験
※「Kawashima M, et al. Eur J Dermatol. 2004;14(4):247-254.」を参考に作成

また、海外で行われた5年間の臨床試験では、長期の使用でフィナステリドの副作用が増えるといったことはありませんでした。

このように、フィナステリドの安全性は、使用期間によって変わることはないことが確認されていますが、副作用は人によって症状や表れる時期が異なります。使用していて気になることがあれば、早めに医師に相談しましょう。

*「二重盲検比較試験」とは

薬の効果や安全性を調べる臨床試験では、

  • 効果や安全性を調べたい薬(A)
  • 従来の薬やあるいは薬を使わなかった場合(B)

を比較して判定を行います。 

このとき、効果や安全性を判定する医師が「どの患者さんがAで、どの患者さんがBか」を把握していると「Aの方が効果があるはずだ」という思い込みが生じます。Aを使っている患者さんに対してより積極的な治療を行ったり、あるいはAの方の効果を過大に評価して判定したりすることがあります。

また、臨床試験を受ける患者さん側にも、以下のような影響が出てしまう可能性があります。

  • 「Aの薬を使っているのだからよくなっている」と思い込む
  • Aの薬を使っていることを理由に、生活習慣を改めるなど薬の効果が出やすい行動を取る

このような医師や患者さんの思い込みや期待に対する行動をなくすことを目的に、「どの患者さんがAで、どの患者さんがBなのか」が医師にも患者さんにもわからないようにします。これを二重盲検法といいます。

二重盲検法で試験を行う場合は、以下のような対策が講じられます。

  • AとBがどちらかわからないように、薬Aと同じ形をした偽の薬Bを使う
  • どの薬がAでBなのかがわからないように、第三者(試験を行う医師や患者さん以外)が情報を管理する

フィナステリドで効果を実感できない場合は?

フィナステリドを長く使っているからといって、効かなくなるということは証明されていません。ただし、薬の効果は人によって異なることから、思ったほど効果を感じられない場合は「効かなくなってきている」と思ってしまうかもしれません。

AGA治療薬はフィナステリド以外にも、内服薬のデュタステリドや外用薬のミノキシジル、また内服薬のミノキシジルがあります。フィナステリドを使っていて効果を感じられない場合は、一度医師に相談してみましょう。

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