女性に多い7つの性感染症とは?
みなさんは性感染症と聞くとどのようなイメージを抱くでしょうか?
「不潔」「遊んでいる」などネガティブなイメージが多いかもしれません。
しかし、性感染症は誰しも罹患するリスクはあるものです。
すぐにはつらい症状が出ないものもあるので、気づかずに長期間放置してしまう方もたくさんいます。性感染症の中には、痛みなどは出ないけれど不妊症の原因になったり、場合によっては命に関わるような病気も存在します。
多くの性感染症は予防や治療ができるものです。
なかなか周りには相談しにくい病気かもしれません。
今回の記事では、そんな性感染症について取り上げます。
正しい知識を身につけ自分やパートナーを守ったり、もしもの時は適切な治療の相談をできるように備えておきましょう。
性感染症とは?
性感染症は、感染した人の精液や腟分泌液などに直接触れることによって感染します。
多くは性交渉の際に感染することから「性感染症」と呼ばれています。
最近はSTI(Sexually Transmitted Infections )やSTD(Sexually Transmitted Deseases)などと呼ぶこともあります。この方が呼びやすいですよね。
ここでいう性交渉とは、通常の腟での性交渉のほか、オーラルセックスやアナルセックスも含みます。
現在はセックスや恋愛も多様化してきているので、さまざまな経路からこの性感染症に罹患するリスクが増えていると言えます。
性感染症は自覚症状がないものもありますが、時間が経って取り返しのつかない症状として現れてきたり、気が付かずに妊娠すると赤ちゃんには重い先天性感染を起こすものもあります。
性感染症は検査で分かりますから、不安があれば医療機関や保健所での検査を検討してみてください。一部の性感染症は保健所で匿名・無料で受けることもできます。
自覚症状が出にくいものが多いので、性的な活動性が高い時期には定期的に検査を受けることを検討しても良いかもしれません。
また、性感染症は治療もできます。
もしも特定のパートナーがいれば、一緒に治療を受けることが必要です。
医師から「治った」と言われるまで、きちんと一緒に治療を受けることが大切です。
もしも一人で悩んでいる方がいたら、お近くの保健所や産婦人科、泌尿器科などにご相談ください。
女性に多い性感染症
日本で知られている性感染症には下記があります。
- 梅毒
- HIV・エイズ
- 性器クラミジア
- 淋菌
- マイコプラズマ/ウレアプラズマ
- 性器ヘルペス
- 尖圭コンジローマ
- トリコモナス
- 性器カンジダ
- A型肝炎
- B型肝炎
- 毛じらみ
- 疥癬
- アメーバ赤痢・細菌性赤痢
- HTLV−1
- HPV
この中で、産婦人科で行う検査で頻度が高いものについて解説していきます。
性器クラミジア
性器クラミジアは、日本で最も頻度が高い性感染症です。
通常は自覚症状がないことが多く、感染に気がつくことが難しいことが特徴です。
そのため、知らず知らずのうちにうつしてしまったり、うつされてしまったりします。
男女問わず感染し、男女ともに不妊症の原因になります。
特に女性では、お腹の中に癒着を起こしてしまうことが多く、異所性妊娠などの原因になることもあります。
また、妊娠出産により赤ちゃんにも感染させてしまうことがあるため、不妊治療の際のスクリーニングや妊婦健診の項目の一つになっています。
性器クラミジアは頻度が高くありふれた病気ですが、しっかりと治療を行うことが重要です。
内服や、重症の場合は点滴での治療が行われます。治癒したかどうかの確認が必要なため、治療をおこなった後に必ず再検査を受けて、治癒したかどうかを確認しましょう。
淋菌
淋菌は、男性の場合には痛みや熱などが症状として出るため比較的気が付きやすい特徴があります。
しかし、女性の場合には症状が出にくく、気が付きにくいことが知られています。
クラミジアと同時に感染していることも多いため、産婦人科では性器クラミジアと同時に検査されることもあります。
クラミジアと同じように不妊症の原因になることや、重症になるとひどい腹痛などを起こすことがあり、女性でも治療が必要な病気です。
通常は点滴での治療を行います。
近年は耐性菌といって、ひとつの抗生剤の点滴では治癒しないケースもあります。
そのため、しっかりと治癒したことの確認が必要ですから、治療を受けた後は再検査で治癒したことの確認まで忘れずに行う必要があります。
マイコプラズマ/ウレアプラズマ
知名度は低いですが、クラミジアや淋菌と同じくらいの確率で感染が認められています。症状としては、性行為ののち1〜5週間の潜伏期間を経た後、症状が出ると言われていますが、実際には無症状のことも多い病気です。女性では尿道からの分泌液がみられたり、排尿時の痛み、性交痛やおりものの増加がみられます。
また、キスやオーラルセックスを介して、口の中に感染することもあります。のどの感染では、痛みや違和感、せきや痰が出やすくなるといった症状の出現が考えられます。ほとんどの場合は自覚症状が見られず、感染に気付きにくいため、注意が必要です。
マイコプラズマ/ウレアプラズマを疑う場合、膣分泌液やうがい液を採取し、PCR法という検査により診断します。感染を疑う機会から24時間経過していれば検査を行うことができます。
いずれのマイコプラズマ/ウレアプラズマ感染においても、抗菌薬の内服により、治療を行います。1回の飲みきり、または1週間内服を続ける投薬方法により治療を行います。
近年耐性菌と呼ばれる抗菌薬が効かない菌も存在します。治療後、治っているかどうかの確認として、再検査を行い、マイコプラズマ/ウレアプラズマが陰性となったかどうかを調べることもあります。
トリコモナス
トリコモナスは女性の場合には強い悪臭のあるおりものなどで気づかれることがあります。陰部の痒みや痛みの原因になることもあります。
ただし、おりものの症状はトリコモナス以外でも同様に悪臭が強くなったり、量が増えることはありますから、症状からトリコモナスを疑うことは難しいケースもあります。
特殊な検査キットを使用するため、性器クラミジアや淋菌と比較すると検査される頻度も低めな印象があります。トリコモナスは原虫と呼ばれる病原体の一種で、顕微鏡で見つけられれば診断をつけることができます。
そのため、子宮頸がん検診などで偶発的に発見されることもあります。
治療は内服薬を使用することが一般的です。
性器カンジダ
性器カンジダは、かゆみなどの症状で気がつくことが多い性感染症です。
性交渉でうつることがありますが、カンジダ自体は女性の腟の常在菌と呼ばれ、健康な方でも体内に持っていることがあります。
そのため検査などで偶然見つかることがありますが、困った症状がなければ必ず治療しなければならないものではありません。ストレスなどで抵抗力が落ちた際に腟内でカンジダが増えてしまうことによって症状が出てくると言われています。
治療には膣錠を使用することが一般的です。最近は薬局などでも購入することができます。
使用してみて効果があれば用量用法を守っていただけていれば問題ありません。
ただ、まれに通常の治療薬が効かないタイプのカンジダの可能性もあります。効果がないと感じたら産婦人科に相談するようにしてください。
尖圭コンジローマ
会陰部や腟の中に尖ったイボができる病気です。痛みなどの症状はほとんどありませんが、イボが増えると見た目で分かりますから、治療を希望して来院される方も多いです。
出産などの際には赤ちゃんにうつしてしまう懸念があるため、早めに治療しておくことが大切です。
治療はクリームを外用したり、液体窒素やレーザーによる治療があります。
なかなか治癒しないため長期に治療を続ける必要があるのがこの病気の厄介な点です。
根気よく治療を続けていきましょう。
性器ヘルペス
一度感染すると、ウイルスが体内に住み続けてしまうため抵抗力が弱くなった際などに繰り返し再発します。
多くはほとんど症状がなかったり、小さな水疱ができる程度で済みますが、時に会陰部が爛れてしまい激痛になることがあります。
激痛のためおしっこをすることも難しくなってしまい、入院が必要になる方もいます。
治療は内服薬や軟膏を使用します。痛みに対しては痛み止めを使用します。
まとめ
今回は性感染症について解説してきました。
性感染症はコンドームの適切な使用などで予防することが可能です。
しかし、100%予防する方法はありませんから、心配な方は遠慮せずに検査を利用することが大切です。
また、もしも感染してしまっても、それは仕方のないことです。
しっかりと治療を受け、治癒したことを確認して、再度予防に気をつけて過ごしていただけたらと思います。
何かお困りのことや心配なことがあれば、お近くの産婦人科や泌尿器科、性病専門のクリニックなどにご相談ください。
保健所などでも検査や相談をすることが可能ですから、覚えておいていただくと良いかもしれません。
参考文献
・日本性感染症学会. 性感染症診断・治療ガイドライン. 診断と治療社; 2020.
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