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漢方薬の正しい飲み方と豆知識

2022/11/17
監修:三上 修

 

漢方薬の正しい飲み方を知っていますか?

漢方薬は、製剤の種類も豊富で、剤型も散剤、錠剤、エキス剤など多くの選択肢があります。選択肢が多いために、飲みにくさを感じるかもしれません。また、漢方薬以外の薬と同じく食後に飲むのがよいのか、飲み合わせは大丈夫なのかなどの疑問を感じている方もいるかもしれませんね。

今回は、これらの疑問にお答えしつつ、漢方薬の効果を発揮できる正しい飲み方について解説していきます。

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漢方とは?

漢方は、中国伝統医学が飛鳥時代に日本に伝来し、以降漢方医学として日本で発展した学問です*1。漢方で用いる漢方薬は植物、動物、鉱物などの自然界にあるもので、薬として効能があるものを抽出してできた生薬を複数組み合わせています。

身体の状態を漢方医学独特の考え方や診察法で「証」を現し、証にあった漢方薬で治療を行います。漢方は民間療法と勘違いされることもありますが、立派な医療行為です。

漢方薬にもしっかりと科学的根拠(エビデンス)があり、作用機序がわかっているものも複数あります。それと同時に漢方薬の副作用もいくつか知られています。

漢方薬の飲み方

漢方薬には生薬を水から煮出して煎じた湯(とう)、生薬を粉状にした散(さん)、有効成分を抽出した固形・半固形薬のエキス剤、生薬の粉末を蜂蜜などで丸めた丸(がん)などの剤型があります。それぞれの特徴と飲み方について解説しましょう*2

 

  • 湯(とう)

生薬を水から煎じたもの。漢方薬の名前に「○○湯(とう)」と入っているもの。例えば葛根湯は葛根、麻黄、桂皮、芍薬、生姜、大棗,甘草などの複数の生薬が配合され、これらを湯で煮出したものです。

湯の漢方は、名前の通り、お湯に溶かして飲みましょう。お湯に溶けない沈殿物も一緒に飲んだ方がよいため、よく混ぜて服用します。冷たい水などで摂ると十分に効果が発揮しない場合があります。

ただし、吐き気などがある場合は、湯気がある温かいものに対して嘔吐が促されてしまうことがあります。その場合には漢方薬を溶かしたものを冷やして服薬すると良いでしょう。

 

  • 散(さん)

生薬が粉にしたもので、例えば五苓散などの○○散という名前です。そのままお湯で飲みましょう。

特殊な飲み方として漢方薬の中に、お酒で飲むとされているものがあります。一例は当帰芍薬散ですが、歴史のある漢方医学の書である『金匱要略』に記載があります*3。当帰芍薬散は、体力が少し低下した成人女性で、倦怠感、手足の冷え、頭痛、めまい、無月経、月経過多などの月経異常のある証に対して処方されることが多い漢方薬です。この当帰芍薬散は、少し温めた日本酒少々で服薬することで効能が得られやすいという記載があるようです。

もちろん当帰芍薬散を白湯で飲んでも効果が劇的に下がるというわけではなく、あくまで飲みやすくするための工夫です。ちなみに漢方医学の中では適量の酒も治療の一種という考え方のようです。

他の特殊な飲み方の例として、喉の乾き、尿量減少などに対して処方されることの多い五苓散は、おもゆ(大量の水分でよく似た薄い粥のうわずみ)で服用するという方法もあります。

 

  • エキス剤

エキス剤は複数の生薬を煎じた液を乾燥し粉末化したものです。エキス剤にも顆粒、粉末(散)、カプセルなどの製剤がありますが、そのまま飲むと飲みにくいため、お湯に溶いて服薬します。お湯に溶かすことで、煎剤と同じように漢方薬特有の香りが出て、効能も上がると考えられています。実は漢方薬の香りにも、胃などの消化管運動を改善し胃酸の分泌を促進することが確認されています。

 

  • 丸(がん)

丸剤は蜂蜜などで固めてあるので、そのまま噛んだり舐めたりせずに服薬します。常温で溶けやすいので、冷蔵庫保存して、飲む直前に出して服用しましょう。

丸薬の中でも中年以降の特に高齢者の加齢に伴うだるさ、しびれ、下肢痛、腰痛などに効果のある八味地黄丸も酒で飲むことが『金匱要略』に記されています。少量のお酒で飲むことで、胃もたれを少なくすると言われています。

 

漢方薬を飲むタイミンングについてですが、こちらは剤型によって変える必要はありません。原則としては空腹時に温めて服用します。他の薬や食事と胃で混ざらない方がよいため、食前30分以上前や食後2-3時間後の食事と食事の間(食間)が望ましいとされています*4

漢方薬自体が生薬を複数含む単一の製剤ではないため、他の薬や漢方薬を複数処方されている場合には、同時の服薬は避けて時間を空けて服薬することをおすすめします。絶対に飲み合わせが悪い組み合わせはありませんが、漢方薬もその他の医薬品と同じく副作用がでることがあります。

漢方薬による副作用として最も重いものとしては、間質性肺炎と偽アルドステロン症が有名です*5。間質性肺炎は小柴胡湯や生薬の黄芩(おうごん)を含む漢方薬には注意が必要です。偽アルドステロン症は高血圧、低カリウム血症などが特徴的な初見で、甘草(かんぞう)を含む漢方薬で起こりやすいとされています。

漢方薬を新しく飲み始めて体調変化があった場合などには、必ず病院で相談しましょう。

次に、漢方薬はどれくらいの期間飲み続けなくてはいけないかについて解説しましょう。治療する対象にもよるのですが、漢方薬は長期間飲み続けないと効果が出ないと誤解されていることもありますが、即効性がある漢方薬もあります。

例えばかぜ症候群に対して漢方薬を飲むと、15分程度で頭痛や咽頭痛が楽になり咳が治るといったこともあります。これは、漢方薬が胃や腸の他、口や鼻の粘膜からも吸収されるためと考えられています。

一方、長期的に治療の要する慢性疾患での漢方薬の効果には時間がかかり、効果を実感するのに数週間かかることがあります。

漢方薬の最大の効果を得るために重要なのは、漢方医学的なアプローチで身体がどの「証」にあるのかを正しく判断することです。証がわかれば自ずと治療薬である漢方薬が判ります。漢方医学特有な考え方は漢方薬の飲み方は少し特殊ではありますが、ぜひ記事を読んで学んでみてくださいね。

漢方薬は飲みにくいと言われるけど

まずは水ではなく、お湯に溶かして飲むか、丸薬やエキス剤もお湯で飲むのがよいでしょう。飲む前に口の中の乾燥を潤すために、一口お湯を飲んでおきましょう。それでも飲みにくい場合には、オブラートや市販の漢方服用ゼリーがおすすめです。

特殊な例として、お湯で吐き気が出る場合や熱性があり冷ます必要がある場合には、冷やして飲むように指導するケースもあります。

また、お子様の場合だと一般的に漢方は独特な味と香りのため、飲みにくいようです。苦くて飲めないなどの場合には、アイスやはちみつに混ぜたり、逆にチョコレートやココアなどの苦味のあるものと一緒に服用したりすると良いでしょう。パンに塗るチョコレートペーストやピーナッツバターに混ぜる方法もあります。

正しい漢方薬の保管方法

漢方薬は湿気に弱いため、湿気、高音、直射日光を避けて、密閉性のよい容器に入れて保管するのが良いでしょう。湿気をすってしまったものや、変形したり固まってしまったりした薬は服用せずに破棄しましょう。

まとめ

漢方薬の特に飲み方について解説いたしました。飲みにくいと思われる漢方ですが、お湯で飲むなどの工夫をすることで飲みやすくなります。また、漢方の香りや味が身体にあうものの方が漢方の効果が高いという説もあります。種類によって差はありますが、ぜひ自分にあった飲み方を探してみてくださいね。

参考文献

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