漢方で気を付けるべき副作用について
生薬と呼ばれる天然の植物や動物、鉱物などから作られる漢方薬は効き目も穏やかなものが多いこともあり、西洋薬と比べて副作用が少ないといわれます。
しかし、実際は漢方薬にも副作用は起こり得るため、内服する場合は注意する必要があります。この記事では漢方による副作用が起こる原因や症状、特に注意した方がよい漢方薬を詳しく説明していきます。
DMMオンラインクリニックでは確かな情報を提供するため以下の取り組みを行っています。
- 適正な監修プロセス
- 医療法人との提携
- コンテンツ作成基準の明確化
副作用が起こる原因
漢方薬で副作用が起こる原因については、いくつかのメカニズムが関わっていると考えられています。
免疫やアレルギー反応による副作用
漢方薬に含まれる生薬の成分に対して、自身の免疫が過剰に反応してアレルギー反応が起こることによって様々な症状を引き起こします。もっとも頻度の高い症状は皮疹やかゆみなどの皮膚症状ですが、まれに肺や肝臓に重篤な副作用を引き起こすことがあります。
重篤なアレルギーを起こしやすい生薬の成分としては、黄芩(おうごん)が知られています。主に小柴胡湯(しょうさいことう)柴苓湯(さいれいとう)と言った漢方薬に含まれている成分です。
肺障害
肺に起こる副作用としては間質性肺炎がよく知られています。発生頻度は0.27%といった報告があり、比較的まれですが発症すると重篤な症状を引き起こすため注意が必要です。内服開始から数ヶ月で発症することが多くなっています。
肝障害
肝臓の機能を悪化させる薬剤性肝障害の頻度も黄芩を含む漢方薬で多いことが知られており、およそ1.0%の頻度で起こるといった報告があります。
そのほかには、頻尿や排尿痛といった症状を引き起こすアレルギー性膀胱炎も報告されています。
過剰投与による副作用
漢方薬の飲みすぎによっても副作用は引き起こされます。副作用を起こしやすい成分として知られている甘草(かんぞう)は、さまざまな漢方薬のほか、漢字が表すとおり甘みがあり食品や調味料、ダイエット食品にも含まれています。そのため、知らない間に過剰摂取してしまうことがあります。
甘草は芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)、抑肝散(よくかんさん)、葛根湯(かっこんとう)など、処方される頻度の高い漢方薬に含まれており、医療用漢方製剤のうち約7割に甘草が使用されています。
甘草による偽性アルドステロン症(偽アルドステロン症)
甘草に含まれる「グリチルリチン酸」という成分は、副腎から作られるホルモンの代謝を阻害してしまうため、ホルモンの働きが過剰になってしまう「偽性アルドステロン症」を発症し、むくみや高血圧、低カリウム血症などの症状を引き起こします。
多くの場合、内服開始後3ヶ月以内に発症しますが、数日で発症することや数年以上経過した後に発症することもあります。
麻黄による交感神経刺激症状
風邪症状に対してよく用いられる麻黄湯(まおうとう)や葛根湯に含まれる生薬である麻黄には「エフェドリン」という成分が含まれています。「エフェドリン」は、体を興奮状態させる働きのある交感神経を刺激するため、脈が速くなったり、血圧が上がったりする「交感神経刺激症状」が現れることがあります。
附子や烏頭による神経麻痺症状
トリカブトの根から抽出される生薬である附子(ぶし)や烏頭(うず)の過剰摂取によって舌や唇、手足のしびれなどの神経症状が生じることがあります。附子・烏頭は、胃腸症状に対して用いられる真武湯(しんぶとう)や風邪症状に対して用いられる麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などの漢方薬に含まれています。
長期投与による副作用
山梔子(さんしし)と呼ばれる生薬を含む漢方薬を5年以上の長期に渡り内服すると、腸の血管(腸間膜静脈)が障害されて腹痛や下痢などの消化器症状を引き起こすことがあります。
副作用の症状
漢方薬で起こる副作用には、頻度の多い消化器症状や皮膚症状のほかに、前に説明したような特定の生薬で生じる副作用による症状があります。
消化器症状
比較的多い副作用の症状として、胃もたれや食欲不振、下痢などの消化器症状があります。多くの場合、これらの症状は漢方薬の服用を中止することで改善します。前述した山梔子の含まれた漢方薬を長期内服している場合は、腸間膜静脈の障害による症状の可能性もあるので、早めに医療機関を受診して詳しく調べる必要があります。
皮膚症状
発疹やかゆみなどの皮膚症状も頻度の多い症状の一つです。
内服を中止することにより症状が改善するような軽症の場合がほとんどですが、稀に重症の薬疹を引き起こすこともあります。
呼吸器症状
前に説明した間質性肺炎を起こした場合には、発熱、乾いた咳、呼吸困難などの呼吸器症状を発症します。重篤な副作用であり、内服の中止のほかに副腎皮質ステロイドの投与など早期に適切な治療を行う必要があります。小柴胡湯のような間質性肺炎を起こす可能性がある漢方薬を内服しているケースでは、呼吸器症状を認めたときは医療機関を受診しましょう。
偽性アルドステロン症に伴う症状
副腎で作られるホルモンの一つであるアルドステロンは、体の水分を保ち、血圧を上昇させる効果を持っています。甘草を含む漢方薬でみられる偽性アルドステロン症は、甘草の主成分であるグリチルリチン酸がアルドステロンの作用を過剰にしてしまうことで起こります。そのため、高血圧やむくみ、低カリウム血症に伴う脱力感など多彩な症状が出現します。漢方薬の内服中止を行うことで症状が改善に向かうことが多いですが、それでも症状が持続する場合はカリウムの補充や減塩、抗アルドステロン薬の内服などを行って対応することもあります。
肝障害に伴う症状
漢方薬により肝臓の機能が障害された場合、血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)などの肝機能の数値の上昇、倦怠感、食欲不振や黄疸が出現します。
交感神経刺激症状
自律神経の一つである交感神経は、体を興奮させて血圧を上げたり、脈を増やしたり、汗を増やしたりする作用を持っています。麻黄が含まれる漢方薬で交感神経の働きが活発になると、血圧の上昇、動悸、頻脈、発汗の増加などの症状が現れます。
漢方の副作用を避けるには
説明してきたように漢方薬にも副作用は起こる可能性があり、個人個人で薬との相性があるので100%予防するというのは難しいかもしれません。ただ、服用の仕方に気をつけることで避けられる副作用も多いので、注意すべきポイントをご紹介します。
漢方薬の併用に気をつける
漢方薬は複数の生薬を組み合わせて作られています。ですので、いくつかの漢方薬を併用すると、気づかない間に同じ生薬を必要以上に内服してしまうことがあり、副作用を生じる可能性があります。漢方薬を複数内服する場合は、自己判断で行うことは避け、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
市販薬やサプリメントの併用に気をつける
偽性アルドステロン症の原因となる甘草は、甘味料やサプリメント、ダイエット食品として漢方薬以外の食品にも幅広く使用されています。また、麻黄に含まれるエフェドリンは市販の風邪薬にも含まれています。
漢方薬に含まれる生薬は、漢方薬以外でも使用されることがあり、意識せずに併用していると、必要以上に内服してしまうことがあります。漢方薬を内服する際は、市販薬やサプリメントなどの使用状況も医師や薬剤師に伝えておくとよいでしょう。
まとめ
天然の植物や動物、鉱物などの生薬から作られる漢方薬は一般的に効果が穏やかですが、副作用が起こらないわけではありません。食欲不振などの消化器症状、発疹などの皮膚症状といった軽症の副作用から、小柴胡湯による間質性肺炎や甘草による偽性アルドステロン症のように早急な対応が必要な重症な副作用まで様々な副作用が起こる可能性があります。
漢方薬を内服する際は、他の漢方薬や市販薬、サプリメントとの併用に注意して医師や薬剤師と相談しながら、自分の症状や体質に合った漢方薬を使用していくことが重要です。
出典
注意しておきたい漢方診療上の副作用(ファルマシア 56巻 3号)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/56/3/56_198/_pdf/-char/ja
スマホやPCで、お好きな場所から医師の診察を受けられます。
問題が解決しない場合は、
こちらからお問い合わせください。