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漢方薬にはどんな効果があるの?

2023/03/01
監修:三上 修

誰もが一度は耳にしたことがある「漢方薬」ですが、どんな効果や副作用があり、実際の医療現場ではどんな治療や症状に対して使われているのかご存じでしょうか。

ひとくちに漢方薬といってもその用途は様々であり、風邪や不眠などの日々の体調不良に使われる場合や、更年期症状などの女性特有の困った症状、または癌の治療中の副作用に対してなど、意外な使い道もあります。

いまは漢方薬を含めた様々なお薬が、インターネット通販やドラッグストアなどで簡単に手に入ってしまう時代です。お薬の情報は薬局や製薬会社のホームページを開けばすぐに見ることができます。効果が欲しい時には適切に使いつつ、「お薬」であるため副作用にも十分に意識して、ぜひ有効に使いたいものです。

この記事では、漢方薬について詳しく知っていただくために、漢方薬の全体像をご説明したうえで、期待できる効果や、注意が必要な副作用について解説させていただきたいと思います。

漢方とは?

西洋医学が普及するずっと昔から、人々は植物、動物、鉱物にいろいろな治療効果を見出してきた歴史があります。

そして、研究成果や経験的な知識が蓄積され、それらの薬効がある植物から抽出された成分が、漢方薬として使われるようになってきました。西洋薬は科学的に合成された化合物であることが多いのですが、漢方薬は「生薬」といって、抽出された植物の成分を薬として使う、という違いがあります。

漢方薬にはざっくりと大きく分けると2タイプあります。

・生薬(しょうやく)

生薬そのものから直接有効成分を抽出するために、お湯で煎じて液体状にして服用する

・エキス剤

生薬から有効成分を抽出し、それを粉状、顆粒状などに加工して服用しやすくしたもの

漢方薬は、西洋薬と同様に「治療薬」と考えることもできますが、重要な特徴は「偏った体質を整える」力があることです。体質が整うと、結果的に病気や体調不良が改善されると考えてよいでしょう。ですから、自分の本来持っている体力や体質以上のものを引き出すほどの強力な力はありませんし、効き方もマイルドです。

では、漢方薬を頼るべき時というのは一体どのような状況でしょうか。

漢方薬の効果は幅広い

西洋医学の考え方では、「病気」か「健康」かのどちらかに区別されることが多いですが、東洋医学や漢方の世界では、病気か健康をはっきり区別することはあまりしません。

病気というほどではないが、健康ではない中間の状態のことを「未病」といい、その状態を正常に近いところまで良くするという考え方をするのです。そのため、漢方薬は「病院にかかるほどではないけどなんだか調子が悪い」とか、「ちょっとした体調不良が続く」、または「便秘や不眠を改善したい」など、漠然とした健康の心配事に対して力を発揮することができます。

漢方薬には多くの種類があり、その種類によって効果が異なります。また、その漢方薬の効果が出るかどうかは疾患や体質などの個人差が大きいとされています。さらに服用を始めて効果がみられるまでは、西洋薬と比較して緩やかでゆっくりであることが多い傾向にあります。

一般的に漢方薬がどういった使われ方をするのか、具体的なお薬の例を挙げながら説明させていただきたいと思います。

〇アトピー性鼻炎:小青竜湯¹、柴苓湯²など

近年、大人も子供もお困りの方が増えているとされている花粉症ですが、実は漢方薬が効く場合があります。漢方薬は速効性が感じられにくいことがありますが、継続して服用することで緩やかに症状の改善が期待できる場合があります。

西洋薬の方が、より効き目が早い場合もありますので、症状が強い方、もしくは早く効いてほしいという場合は西洋薬を使うことも考えましょう。

〇便秘:大黄甘草湯³、麻子仁丸⁴、大建中湯⁵など

若い方から高齢の方にかけて、便秘でお困りの方は多いと思います。西洋薬にも多くの便秘薬が存在します。西洋薬は効くけど強すぎる、もしくは漢方薬で徐々に便秘を改善していきたいといった方には向いている可能性があります。

〇更年期障害:加味逍遥散⁶、桂枝茯苓丸⁶など

漢方薬は女性特有の産前産後の悩みや更年期障害に用いられることがあります。人によって体質が異なることから、体に合う漢方薬もそれぞれです。

上に挙げたような症状以外にも、様々な疾患や症状に対して使われるのでご説明しきれませんが、それだけ漢方薬には適切に使うと有効な働きがあるということが分かると思います。

漢方薬で気をつけるべき副作用

漢方薬はお薬である以上、もちろん副作用のリスクはあります。

漢方薬に含まれる成分によって起こる可能性のある副作用は異なりますので、一概にいうことはできません。代表的な副作用は以下のようになりますので、現在漢方薬を服用していて、思いあたる症状がある方は病院を受診するようにしましょう。

〇肝機能障害

西洋薬にも共通し、比較的みられる頻度が高い副作用になります。基本的にどの種類の漢方薬にも肝機能障害のリスクはあると考えてよいでしょう。中でも特に肝機能障害に注意した方がよいのは、サイコやオウゴンという成分が含まれるものになります。肝機能は軽度であれば自覚症状がないこともありますが、進行してくるとだるさや黄疸(皮膚が黄色くなってしまう症状)がみられることがあります。その場合は病院で血液検査をしてもらう必要があります。

〇間質性肺炎

細菌やウイルスが原因となり感染症を起こしてしまった肺炎とは異なり、主にお薬に対するアレルギー反応によって肺の細胞が線維化して、炎症を起こしてしまう病気です。

症状としては、発熱や乾いた咳、息苦しさなどがみられます。重症化すると命に関わることがある病気です。原因が分からない場合もありますが、漢方薬だけでなく西洋薬やサプリメントも間質性肺炎を起こす可能性があります。気になる症状があった場合は胸のX線やCT検査などの画像検査が必要になりますので病院を受診しましょう。

〇偽性アルドステロン症

漢方薬の多くに含まれる甘草(=カンゾウ)という生薬の成分(グリチルリチン)によって、高血圧やむくみ、低カリウム血症、筋肉のこわばり、筋肉痛などの症状があらわれるものです。「原発性アルドステロン症」という血圧が上がってしまう病気に似た状態になることから、この病気の名前がついています。疑わしい症状がある場合は漢方薬の中止が必要になります。

〇胃腸症状

漢方薬の服用中には胸焼けや食欲低下、吐き気といった胃腸症状が出る可能性があります。これは特定の漢方薬に限った話ではなく、様々な生薬に多くの成分が含まれている漢方薬全体に共通する症状と考えてください。漢方薬の服用を始めたタイミングで思い当たる症状が出た場合は、一旦内服を中止してみましょう。

〇じんましん、皮疹などのアレルギー症状

皮膚にかゆみが出たり、ぶつぶつやじんましんなどの皮疹が出ることがあります。これは一種のアレルギー反応であり、漢方薬の他に西洋薬やサプリメントでも起こりうる症状です。場合によってはアナフィラキシーという重いアレルギー症状が出ることもありますので、特に今まで飲んだことがないような新しい薬を飲む際は注意が必要です。

漢方薬は安全というイメージをお持ちの方がいると思いますが、お薬である以上は副作用に注意しないといけないということが分かると思います。

西洋薬との併用が行われている

漢方薬は、症状に対してしっかりと効果が期待できそうであれば、病院でも西洋薬と併用されることがあります。そもそも近年は、医師が西洋薬と漢方薬を同時に処方することが珍しくなくなってきています。それだけ漢方薬の効果が知られるようになったということでしょう。

一方で、漢方薬に含まれる成分の中には、西洋薬に含まれる成分と重複している場合や薬効が似ているものがありますので、お薬によっては組み合わせに注意をした方がよいでしょう。お薬の飲み合わせについて気になることがあれば、担当の医師や薬剤師さんにご相談してみることをおすすめします。

以下に西洋薬と併用される漢方薬を例として少し挙げてみたいと思います。

〇癌の化学療法による副作用(特に神経障害):牛車腎気丸⁷

化学療法のお薬を使用していると、手足が痺れ、強い痛みを訴えられる患者さんがいます。日常生活にも支障が出ることがあり、西洋薬による痛み止めや漢方薬で対応することがあります。

〇認知症:抑肝散⁸

認知症による感情の変動が大きい方、もしくは幻覚や妄想、不眠がみられる方に使われることがあります。認知症の進行を予防する効果のある西洋薬と併用されることがあります。

まとめ

今回は漢方薬について簡単にではありますが、ご紹介させていただきました。

漢方薬の中には、同じ効果や副作用がある複数のお薬が存在していることがあります。そのお薬が合うかどうか、そして効果が得られるかどうかは個人差が大きい側面があります。

このような一般的な漢方薬についての知識を知ったうえで、いざという時、そして西洋薬だけではなかなか効果が得られない時に漢方薬に頼ってみるのもよいでしょう。

参考文献

  1. 馬場 駿吉ら,小青竜湯の通年性鼻アレルギーに対する効果.耳鼻臨床. 1995:88(3);389-405.
  2. 橋口 一弘ら, 柴苓湯による鼻アレルギーの治療.耳鼻咽喉科展望.1990:33;61-66.
  3. 三好 秋馬ら, ツムラ大黄甘草湯エキス顆粒(医療用)の二重盲検法による便秘症に対する臨床効果. 消化器科. 1994:18;299-312.
  4. Cheng CW, et al. Efficacy of a Chinese herbal proprietary medicine (Hemp Seed Pill) for functional constipation. American Journal of Gastroenterology 2011; 106: 120-9.
  5. Manabe N, et al. Effect of daikenchuto (TU-100) on gastrointestinal and colonic transit in humans. American Journal of Physiology-Gastrointestinal and Liver Physiology 2010; 98: G970-75.
  6. 寺内 公一ら, 産婦人科医必携 現代漢方の基礎知識 更年期障害. 産婦人科の実際. 2014:63;315-320.
  7. Oki E, et al. Preventive effect of Goshajinkigan on peripheral neurotoxicity of FOLFOX therapy (GENIUS trial) : a placebo-controlled, double-blind, randomized phase III study. International Journal of Clinical Oncology 2015; 20: 767-75.
  8. Mizukami K, et al. A randomized cross-over study of a traditional Japanese medicine (kampo), yokukansan, in the treatment of the behavioural and psychological symptoms of dementia. International Journal of Neuropsychopharmacology 2009; 12: 191-9.
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