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漢方薬のメリット・デメリットについて

2022/10/20
監修:三上 修

漢方薬はさまざまな症状に対して処方されますので、聞き馴染みのある方も多いことでしょう。「苦い」「においが独特」「飲みにくい」など、苦手意識のある方も少なくないと思います。漢方薬とはどんなもので、どのような効果があり、西洋薬とはどんな違いがあるのか、そのメリットやデメリットについてわかりやすくご紹介していきます。

漢方薬と西洋薬の違い

西洋薬は、主に合成された化学物質からなるもので、1つの有効成分が1つの疾患・症状に作用します。一方で漢方薬(漢方療法)は、古代中国の伝統医学が6世紀前半に日本に伝わり、日本で独自の発展をとげたもので、植物などの生薬から抽出したエキスを高温で乾燥させ、顆粒状に使用したものを用いています。

顆粒タイプの漢方薬が主流な理由は、均一さを保ちやすく、服用時も効率的に吸収されるためです。漢方薬は、複数の生薬を組み合わせることによってはじめてその効果を発揮します。西洋薬と違い漢方薬では、複数の生薬の成分が体に作用して、体調を改善させるイメージです。

漢方薬のメリット

漢方薬は、西洋医学では診断のつかないような症状や、効果がない・対処しづらい症状にも効果を発揮するケースがしばしばあります。例えば、更年期の不調として「冷え、頭痛、めまい、肩こり、イライラ、むくみ」など、さまざまな症状が同時に現れることがあります。西洋薬にも更年期の不調の治療薬はありますが、西洋薬のみでこれらの症状をすべて改善させることは困難なことが多いです。

そこで漢方薬を使用してみると、これらの症状が一挙に軽減されたり、消失したりします。このように、漢方薬は幅広い症状に対応でき、一種類の漢方薬で複数の不調を改善できることが少なくありません。

今日では、かぜ症状、下痢や便秘、お腹の張りなどの消化器症状、倦怠感、頭痛やしびれなどの神経症状、排尿症状、抑うつや不安、冷え性、むくみ、女性では月経困難症や月経不順などに幅広く用いられています。漢方薬は効果の発現も比較的マイルドなことが多く、例えば便秘に西洋薬を使用すると腹痛や下痢を起こしやすい人でも、漢方薬を使うとそのような症状が出にくいです。

また、依存性や離脱症状がなく、処方できない・処方してはいけないケースが少ないため、子供や高齢者、妊婦さんに対する使用のハードルが比較的低いです。漢方薬が体に合わなかったり、副作用が出てきた場合はすぐに中止することができたり、種類を変更しやすいのもメリットの一つです。

ある調査によれば、適応症の幅広さや処方のしやすさから、漢方薬を日常的に処方している医師は9割近くいるといわれています。

漢方薬のデメリット


漢方薬は「100%安全な治療」ととらえられがちですが、副作用があることも知っておきましょう。「麻黄」という生薬には動悸、興奮、血圧上昇、頻脈、排尿障害を起こしうる成分が含まれています。そのほか、「地黄」「大黄」には腹痛、下痢、食思不振が、「附子」は動悸、のぼせ、舌のしびれ、悪心が、「甘草」には血圧上昇、低カリウム血症、浮腫、のぼせ、めまい感が出ることがあります。

必ずしもこれらの症状が出てくるわけではありませんが、症状が強いときには注意が必要です。偽性アルドステロン症、薬剤性肝障害、間質性肺炎など、長期投与による重篤な副作用も報告されています。また、漢方薬は、複数併用することで効果が薄れてしまうことがあります。特に注意が必要なのは、複数の医療機関から漢方薬の処方を受けている場合です。新しい医療機関を受診する際には、おくすり手帳を提示するなどして、現在の内服薬について医師に伝えましょう。

また、漢方薬は、症状にもよりますが、効果が出てくるまでに数週間~数か月かかることがあり、西洋薬と比べて即効性は低い傾向にあります。例えば、発熱したときに素早く熱を下げるのは西洋薬のほうが優れています。

加えて、漢方薬は顆粒タイプのものがほとんどなので、粉薬の内服が苦手な人にとっては漢方薬の剤型はデメリットと言えるでしょう。服用の際にはオブラートを使用したり、お湯に溶かして飲んだり、口に少量の水を含んでから漢方薬を服用するなど、内服のコツが要ります。初めて漢方薬を服用する方は、処方を受ける際に、医師や薬剤師から飲み方のコツを事前に聞いておくとよいでしょう。

以上から、漢方薬にも西洋薬と同様に、注意すべき副作用や短所があります。必ず医師の指導のもとで服用し、服用開始後から体に何かしらの不調が出てきたときには、適宜医療機関へ相談することが大切です。

漢方治療の考え方

これまでお話してきたように、ある病気をピンポイントで治療するには、西洋薬のほうが優れていることが多いです。不調の原因が西洋医学で解決できるものに対しては、まず初めに西洋薬を使用するべきですが、西洋医学では原因がわからない・対応できない・効果が乏しい症状に対して、漢方薬は時に劇的に効果を発揮します。

ただし、特に慢性的な症状に対しては、漢方薬によって症状の改善はするものの、完全にはなくならない可能性があることも念頭におきましょう。私が外来で漢方薬を処方するときには、「効果は数週間~2、3か月かけてゆっくり出てきて、効く人にはしっかり効きますが、症状が完全には良くならない可能性もあります。あまり効果がないようでしたら、別の種類の漢方に変えてみましょう」と患者さんに説明するようにしています。

漢方薬を開始するときには、「すぐには効かないことも多い」、「症状は完全にはよくならないかもしれない」、「合う漢方薬を見つけるまでには時間がかかるかもしれない」という考え方を持ち、効いたらいいな、くらいの気楽な気持ちで内服してみるとよいでしょう。

一つの症状をとっても漢方薬の選択肢は複数あるため、一種類を試して効かなかったからといってあきらめる必要はありません。数か月服用してみても効果が乏しいときには、医師と相談して漢方薬の種類を変更してみるとよいでしょう。

まとめ

漢方薬の成り立ちや西洋薬との違い、メリットやデメリットについて説明してきました。

漢方薬は子供から高齢者、妊婦まで、西洋薬に比べると比較的処方しやすいお薬で、一つの症状をとっても複数の処方の選択肢があるため、治療の柔軟性も高いです。

体の不調に対して西洋薬で足りない部分は漢方薬で、漢方薬で足りない部分は西洋薬でというように使われており、漢方薬は現代の医療においても大切な役割を担っています。

「西洋薬では効果がなかったけれど、漢方薬がよく効いた」というケースはよくあることで、体の不調に悩まされている方やそのために生活にも影響が出ている方は、不調の原因が何なのか、漢方薬で症状の改善が期待できるのかどうかをまず医師と相談してみましょう。

臨床に携わる多くの医師は漢方薬に対してのある程度の知識を持ち合わせていますが、より詳しい医師を探す目安として、日本東洋医学会認定の専門医の有無を一つの判断基準にするとよいと思います。

参考文献

漢方薬に対する誤解を解く

Complementary and Alternative Medicine: a Japanese Perspective

・産婦人科専門医のための必修知識2020年度版 E112-E114

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