お知らせ クーポン ヘルプ
コラムカテゴリ不眠症・睡眠障害

病院で処方される睡眠導入剤の効果

2022/10/20
監修:三上 修

皆さん、睡眠導入剤(睡眠薬)と聞くとどのようなイメージをお持ちですか。
睡眠導入剤は、「効果が強そうで怖い」「副作用が多いのでは」「依存性があるのではないか」という考えをお持ちの方が結構いらっしゃるようです。

今回は、睡眠導入剤について誤解なく正しく理解してもらうため、解説させていただきます。

睡眠導入剤とは?


まず、世間でよく言われている睡眠薬は、今回お話しする睡眠導入剤のことを指しています。

睡眠導入剤は、不眠症で日中の生活にまで悪影響を及ぼす状態になってしまっている方に症状を軽減させることを目的に使用されます。

不眠症は意外と多く、日本人成人のうち約20%が不眠を訴えており、6%の方が睡眠導入剤を継続的に服用しているといわれています*1。不眠症は決して珍しいものではなく、多くの方が悩んでいるということがわかります。

睡眠導入剤は大きく5種類に分けられる

睡眠導入剤は多くの種類があり、薬を飲んでいる方ですら混乱してしまうことがあります。ここで、睡眠導入剤にはどのようなものがあるのか説明します(どのように効くのか、どれくらい効果が続くのかについては後述の睡眠導入剤の効果で触れていきます)。

●バルビツール酸系

1900 年代に登場した古いタイプの睡眠薬です。効果は非常に強いのですが、その分依存性も高い薬です。現在は睡眠導入剤として用いられることはほとんどなくなってきました。いわゆる「睡眠薬は危ない」というイメージはこのバルビツール酸系の薬によるものが大きいとされています。

●ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系

1960 年代に登場した睡眠導入剤です。眠気やふらつきなどの副作用を認めることがありますが、効果および安全性が高いので現在も広く使用されている薬です。ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の薬の違いは化学構造式の違いによるもので、副作用の違いなど細かい点で異なる部分もありますが、効果など概ね同じものと思っていただいて構いません。

●メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬

2010年代に登場した比較的新しい薬です。自然な睡眠を促す薬で、ベンゾジアゼピン系と異なり、強さは弱めですが副作用が少ないのが特徴といえます。

睡眠導入剤の効果は2つ

ここでは、睡眠導入剤がどのようにして効果がでるのか、作用時間はどれくらいなのかについて説明していきます。睡眠導入剤は多くの種類があり、それぞれの薬剤の作用時間と患者さんの不眠症のタイプによって薬を使い分けます。

まずは、それぞれの薬がどのような作用で眠気を生じるかについて解説します。

睡眠導入剤は大きく分けて2つの作用機序に分けられます。

①脳の活動を抑える(バルビツール系やベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系はこちら)
②自然な入眠を促す(メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬はこちら)

それではそれぞれ見ていきましょう。

①脳の活動を抑える(バルビツール系やベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系)

こちらは脳の神経活動を抑制させることで眠気が生じるものとなります。具体的に言うと、GABAと呼ばれる神経伝達物質の働きを増強させることによって神経活動(神経の興奮)を抑制させます。

GABAはγ-アミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acidの頭文字をとっています)というアミノ酸の1種で、脳における抑制性の神経伝達物質で、脳全体の活動を抑制する(落ち着かせる)働きがあります。

バルビツール系やベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の薬はGABAの働きを強めて、脳の活動を抑制することによって催眠作用を発揮します。それと同時に不安と関係する神経系を抑制するため、抗不安作用や筋肉の緊張もやわらげ、筋弛緩作用なども認めます*2

②自然な入眠を促す(メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬)

私たちの体内には睡眠に関わるホルモンが存在します。
メラトニンは体内時計に作用し、自然な眠りを促す作用があります。メラトニン受容体作動薬はメラトニンの作用を増強することで入眠を促します。

オレキシンは脳の覚醒状態をもたらすオレキシンをブロックすることで覚醒を抑制し、入眠を促します。

睡眠薬はどのように使い分けるの?


次に睡眠導入剤の効果時間による使い分けについて説明します。わかりやすくするためにまずは不眠症のタイプについてお話します。

不眠症のタイプ

①入眠障害:
寝床についても眠りにつけず時間がかかってしまう(30分-1時間以上)ため苦痛を感じる。

②中途覚醒:
いったん眠りについたとしても、翌朝までに何度も(2回以上)目が覚めてしまう。

③早朝覚醒:
朝早く目が覚めてしまい、その後は眠れなくなってしまう。

④熟眠障害:
睡眠時間は十分取っているが、起きたときにぐっすり眠った感じが得られない。

薬の作用時間

メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬はあくまで自然な入眠を導入する薬であり、現在不眠症で使用される薬は主にベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系となります。

ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系はその作用時間から以下の4つに分類されます*3

超短時間作用型(作用時間 2-4 時間)
短時間作用型(作用時間 6-10 時間)
中間作用型(作用時間 20-30 時間)
長時間作用型(作用時間 50-100 時間)

この作用時間の違いを利用して、薬の使い分けをするのですが、先ほどの不眠症のタイプと照らし合わせて以下のように使用されることが多いです。

  • 入眠障害→超短時間作用型や短時間作用型
  • 中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害→中間作用型・長時間作用型

睡眠改善薬とは違うの?

不眠でお悩みの方がインターネット等で情報を調べると、睡眠導入剤の他に「睡眠改善薬」という薬もあることに気が付かれたかと思います。睡眠導入剤と睡眠改善薬は一見似たようなイメージがあるように感じますよね。しかし、この2つの薬は特徴が大きく異なりますので注意が必要です。

睡眠改善薬は市販されており、ドラッグストアなどでも購入可能な薬です。主な成分はジフェンヒドラミンと呼ばれる抗ヒスタミン作用のある成分です。
ジフェンヒドラミンはヒスタミン(脳の覚醒作用がある)をブロックすることで眠気が生じます。

通常、抗ヒスタミン薬は花粉症などのアレルギーの病気に用いられますが、抗ヒスタミン作用により強い眠気が副作用として生じます。この副作用を応用して販売されたのが睡眠改善薬です。

どちらかというと普段は眠れているが、一時的に眠れなくなった時に使用する薬というふうにとらえていただくといいかと思います。

睡眠改善薬は市販で簡単に手に入りやすいですが、あくまで抗ヒスタミン薬の副作用としての眠気を利用した一時的な不眠に用いる薬です。副作用が強くでたり、数回使っても効果がない場合は漠然と使用を続けるのでなく、病院を受診し医師へ相談するようにしましょう。

まとめ

病院で処方される睡眠導入剤はどういうものなのか、どのような効果があるのかについてお話しました。

不眠症のタイプ、睡眠導入剤の種類は様々であり、睡眠導入剤を適切に使用することで不眠を改善することが期待できます。一方、合わない薬を使っていると改善しないばかりか副作用が前面に出てしまい、かえってつらくなってしまうこともあります。

不眠でお困りの方はぜひ医師に相談し、必要に応じてその方に合った睡眠導入剤を処方してもらうといいかと思います。

今回の記事が不眠でお悩みの方に睡眠導入剤についての理解が少しでも深まれば幸いです。

*当院では、エスゾピクロン、リスミー、デエビゴ、ラメルテオンの4種類のみを取り扱っています

参考文献

  1. Liu X, et al. Sleep loss and daytime sleepiness in the general adult population of Japan. Psychiatry Res 93:1-11, 2000
  2. 稲田 健. 睡眠薬治療. 日本臨床 78: 261-266, 2020
  3. 日本睡眠学会. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン
DMMオンラインクリニックでは
予約、事前問診、ビデオチャットでの診察、決済、薬の受け取りまでワンストップで完結!
スマホやPCで、お好きな場所から医師の診察を受けられます。

問題が解決しない場合は、
こちらからお問い合わせください。