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コラムカテゴリ不眠症・睡眠障害

睡眠導入剤の種類とその副作用について知ろう

2023/02/09
監修:三上 修

不眠症の患者様が多い現在、日本国内では様々な種類の睡眠薬が販売されています。処方薬だけではなく市販されている薬もあり、どの薬を飲んでいいか、今飲んでいる薬はどんな効果があるのか分からないことが多いでしょう。

ひとくちに睡眠薬と言っても、睡眠導入剤から、中途覚醒を改善する薬、睡眠のリズムを調節する薬、気分障害に合わせて睡眠の質を上げる効果がある薬、漢方薬など様々な種類があります。今回は、その中でも睡眠導入剤について解説していきます。

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睡眠導入剤とは?

睡眠導入剤は、文字通り睡眠の導入をスムーズにする、つまり寝付きをよくする作用がある薬です。日本睡眠学会のガイドラインには、睡眠導入剤は本質的には睡眠薬と変わりないと定義されていますが、今回はその中でも寝付きが悪い症状によく使われる薬について解説するため、あえて区別して睡眠導入剤という言葉を使用します。

睡眠薬には、そのほかに、途中で目を覚ます(中途覚醒)を改善する薬、睡眠のリズムを調節する薬があります。どの薬が症状にあっているかは、診察で医師が患者様と相談し判断、処方します。

 

代表的な睡眠導入剤3種類

睡眠導入剤には、ベンゾジアゼピン系睡眠薬と、Zドラッグ、オレキシン受容体拮抗薬の大きく3種類があります。それぞれについて解説していきます。

・ベンゾジアゼピン系睡眠薬

人間の脳には、気分を鎮静化させるGABAという神経の信号を伝達する物質がありますが、その物質が作用する部分のすぐそばに、ベンゾジアゼピン系睡眠薬が作用する部分(ベンゾジアゼピン受容体)があります。

その標的にベンゾジアゼピン系睡眠薬が作用することで、GABAと同じような作用、つまり鎮静=睡眠を促すといった効果が期待できます。

ベンゾジアゼピン受容体は2種類で、①睡眠作用、②抗不安・抗痙攣・筋弛緩作用をきたすものがあります。ベンゾジアゼピン系睡眠薬はその両方に作用するため、睡眠作用に加え抗不安、筋弛緩作用が加わりリラックス効果が高まります。

このような理由から、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、効果が高く、使用感がよいため常用することが多いですが、常用することで薬が効きにくくなったり、薬なしでは睡眠ができなくなったり(依存性の形成)することがあります。

適切な量を適切なタイミングで使用することが大事で、容量が増えすぎないようにすることが必要です。主治医とよく相談して、薬の量を調整しましょう。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は沢山あり、列挙するのが難しいですが、一般名としては○○パム、○○ラムという名前の薬が多いです。

・Zドラッグ

ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロンなど、頭文字にZがつくことが多い、ベンゾジアゼピン系ではない睡眠薬をZドラッグといいます。

ベンゾジアゼピン系の薬と同様に、ベンゾジアゼピン受容体に作用することでGABAと同様の作用を示し眠気を促しますが、Zドラッグはベンゾジアゼピン系の薬とは異なり、睡眠作用を重点的に起こし、抗不安・抗痙攣・筋弛緩作用はほとんど起こさないと言われています。このため、純粋な睡眠効果が得られやすいと言われています。

睡眠薬としての効果は高いですが、Zドラッグもベンゾジアゼピン系睡眠薬ほどではないですが、依存性があると言われています。内服は自己判断ではなく、医師と相談してから行いましょう。

・オレキシン受容体拮抗薬

人間の脳には、オレキシンという覚醒に携わる神経伝達物質があります。オレキシンは、1998年に日本人の柳沢正史先生が発見し、元来食行動などに関連すると言われていましたが、近年睡眠・覚醒に関わることが分かりました。

そのオレキシン受容体を遮断することで、覚醒状態の遮断=眠気を促す、という作用をきたします。ベンゾジアゼピン系睡眠薬などとは異なり、人間の睡眠を自然に促すため、理想的な睡眠薬とされています。また、依存性についても極めて低いと言われており、近年睡眠薬としてこの薬が多く処方されています。ベルソムラ、デエビゴなどの薬がこれに該当します。

気をつけるべき睡眠導入剤の副作用

普段よく見られる睡眠導入剤の副作用について、以下に説明していきます。

・日中の眠気、ふらつき、めまい、頭痛、転倒

これらの症状は、睡眠導入剤の副作用としてよく見られます。睡眠を促す=眠くなる、不適切なタイミングで眠くなると起こる作用と考えていただくと分かりやすいと思います。これらの症状が出現し、持続する場合は医師と相談しましょう。

・健忘

ベンゾジアゼピン系睡眠薬で多くみられます。健忘の仕方は、薬を飲んだ後の記憶がなくなる場合が多いです。多くの場合は、記憶が飛んでいるため、本人はあまり自覚できず、周囲から指摘されてから気づくことが多いです。

・悪夢

オレキシン受容体拮抗薬使用時によく見られますが、その他の薬でも見られることがあります。悪夢がなぜ起こるのかはっきりとは分かっていませんが、持続する場合は生活の質を大きく下げる可能性がありますので、医師と相談し可能であれば薬の変更を相談してみるとよいかもしれません。

・イライラ、怒りっぽい

ベンゾジアゼピン系睡眠薬でよく見られます。ベンゾジアゼピン系睡眠薬を常用することで、脱抑制という状態になり、イライラや怒りっぽさが出てくることがあります。ベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用しだしてからイライラするようになった、怒りっぽくなったという状態になった場合は、医師と相談することをおすすめします。

・せん妄

普段は何も精神症状がない方が、突然何もないところに人が見えるようになったり、思い込みが強くなったりして、一見認知症や精神病を急激に発症したような状態となります。高齢者によくみられます。ベンゾジアゼピン系睡眠薬はそのリスク薬と言われており、せん妄が疑われた場合は、基本的にはベンゾジアゼピン系睡眠薬は中止します。

・睡眠時異常行動

寝ている間に冷蔵庫を食べあさったり、外出したりするといった行動を起こすことがあります。本人は眠っているので無意識のうちに行っているのですが、周囲がその異常性に気づき発覚します。症状が起こる原因としては、睡眠導入剤を飲んだあとも体を動かしていろいろなことを行っている場合に多くみられます。そのため、睡眠導入剤を使用してすぐに床に就くことで症状が改善することが多いです。持続する場合は危険を伴う可能性もあるため医師へ相談することをお勧め致します。

 

市販されている睡眠導入剤も慎重に使用しましょう

ドラッグストアなどで市販されている睡眠導入剤もあります。睡眠導入剤ではなく睡眠改善薬として市販されています。成分の多くはジフェンヒドラミンというもので、ヒスタミン受容体に作用することで眠気を促します。動悸、めまいといった副作用が起こる可能性がありますので、市販薬といえど自己判断で購入せず、まずは医師へ相談することをおすすめします。

眠れる健康食品もあるけれど・・?

最近、健康食品の中でも、とある乳酸菌飲料に睡眠効果があると話題になっています。基本的には害がないため、その飲料により睡眠が得られるのであればよいのではないかと思いますが、糖分が多く糖尿病の方などは飲みすぎに注意する必要があります。 健康食品を使用する場合も、医師と相談しましょう。また、健康食品を使用している際は、医師に何をどのくらい飲んでいるのか伝えていただくことをおすすめします。

まとめ

睡眠導入剤には様々な種類があり、それぞれに利点、欠点があります。患者様の症状や生活スタイルに合わせ、適切な量を適切なタイミングで飲んでいただくことが重要です。分からないことや疑問点は自己判断で解決することなく、医師へ相談しましょう。 *当院では、ルネスタ、リスミー、デエビゴ、ロゼレム(いずれもジェネリック)の4種類のみを取り扱っています

参考文献

日本睡眠学会 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン

ストール精神薬理学エセンシャルズ 神経科学的基礎と応用 第4版

ベルソムラ錠 添付文書

デエビゴ錠 添付文書

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