女性AGAの治療方法について解説
男性型のAGAはテレビCMなどで知名度があり、名前を知っている方も多いでしょう。実は、薄毛や脱毛は男性だけではなく女性にも起こります。
女性のAGAをFAGA(Female AGA)と呼んでいます。FAGAの悩みはあるけれど誰にも相談できずにいる方もいらっしゃると思います。薄毛や脱毛は、見た目の変化を起こすため、精神的・社会的にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
実は、FAGAはまだはっきりした原因やメカニズムが解明されていません。AGAと比べるとFAGAの治療に確立されたものはありませんが、その中でもいくつか有効な薬剤があります。今回はFAGAの治療方法について詳しく解説していきます。
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FAGA(女性型男性型脱毛症)とは?
女性の薄毛、脱毛をFemale androgenetic alopecia (FAGA)といいます。Androgeneticとは、男性ホルモンであるアンドロゲンが発症に関与しているという意味で、男性型のAGAはその発症にアンドロゲンが強く影響していることがわかっています※1。
一方、FAGAはAGAとは発症のメカニズムなどが異なることが最近わかってきました。そのため、FAGAではなく、Female pattern hari loss(FPHL)と呼ばれることもあります。日本では、FAGAという呼び名の方がわかりやすいかもしれませんが、FAGAもFPHLも女性型脱毛症を指す同義語です。
AGAとFAGAの違い
男性の脱毛は通常こめかみの部分から始まり、後退した生え際は最終的にM字ハゲになっていくのが典型的なAGAです。多くは、生え際と一緒に頭頂部の髪も徐々に薄くなっていきます。これに対して、女性のFAGAでは、髪の分け目のラインが徐々に薄くなっていき、頭頂部から全体的に薄毛が進行していきます※2 。男性のように完全に禿げてしまうことはまれですが、薄毛が進行すると頭皮が見えてしまう場合もあります。女性のFAGAは更年期に多発することが多いのですが、20代などの若い女性でもFAGAが起こることはあります。
男性型のAGAは、男性ホルモンの影響で髪の毛をつつむ毛包が縮小し、毛周期が短くなり発症します。対して、FAGAは男性ホルモンだけでは説明できない部分があります。なにかしらの原因で毛髪の成長期が短縮してしまい、毛周期が短くなることは、AGAもFAGAも共通しています。
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FAGAの原因
毛周期が短縮することで、髪が十分に太く長く成長できないために抜け毛になりやすく、毛の1本1本も細く切れやすく薄毛になってしまいます。女性にも体内に男性ホルモンが微量にありますが、普段は女性ホルモンとバランスをとって、男性ホルモンの機能が調節されています。何らかの原因で女性ホルモンが低下したりバランスが崩れたりしてしまうと、男性ホルモンの影響が強くでてFAGAが起こるのではないかと考えられています。
FAGAの原因にはホルモンバランスの乱れ以外にも、栄養不足や薬剤の影響、肉体的・精神的ストレスなど、さまざまな可能性が考えられます。たとえば鉄や亜鉛、タンパク質、ビタミンB群など、髪の発育に必要な栄養素が不足すると、薄毛や脱毛の原因になります。
また女性の脱毛の原因は、FAGA以外にもあります。甲状腺疾患や全身性エリテマトーデスなどの自己免疫性疾患による二次性の薄毛や脱毛症などです。これらの病気とFAGAは分けて考える必要があります。何らかの病気があって二次性に脱毛症を起こしている場合には、原疾患(げんしっかん:あらゆる症状や合併症の元となる最初の病気)の治療を行うことで症状が改善することがあります。
FAGAの治療
FAGAの治療には、主に外用薬と内服薬の2種類があります。代表的なものはミノキシジルとスピロノラクトンです。
ミノキシジル
日本で承認されている薬剤としてミノキシジルの頭皮の塗り薬(外用薬)があります。ミノキシジル外用薬は、AGA/FAGAの治療ガイドラインでも「使用を強く推奨する」とあり、研究により効果が裏付けされた薬剤です。
ミノキシジルは、髪の毛のもとの細胞に働きかけて細胞の増殖を促進させ、成長期を維持し、頭皮の血管を拡張して血流を促す作用があるとされています。男性ではミノキシジル5%が推奨されますが、FAGAでは治療効果と副作用のバランスからミノキシジル1%が推奨されています。
ミノキシジルは、もともと血圧を下げる降圧薬として開発された飲み薬です。ミノキシジルの内服は外用薬と違い血中濃度が上がりやすいため、多毛症や胸痛、動悸、息切れなどの重大な心臓や血管の障害が生じる可能性があります。使用中に気になる症状があった場合は、医師に相談しましょう。
スピロノラクトン
スピロノラクトンは、アルドステロン拮抗薬というタイプの利尿薬で、もともとは高血圧や心不全の治療薬として使われている薬剤です。アルドステロンは、男性ホルモンのアンドロゲンと同じステロイドホルモンの一種で、スピロノラクトンにより男性ホルモンの作用を抑える効果があります。特に、ミノキシジルに反応しないFAGAや多嚢胞性卵巣症候群など婦人科疾患で男性ホルモンが脱毛発症に影響している場合、スピロノラクトンで症状が改善する可能性が高まるとされています。
スピロノラクトンは、FAGAに対しては通常は自費診療ですが、多嚢胞性卵巣症候群の治療では保険診療で治療を行うことができます。
その他、アデノシンの外用や5%カルプロニウム塩化物の外用という選択肢もあります。治療ガイドラインでは、FAGAに対しては、「行ってもよい」という推奨度ですが、アデノシンは成分が配合された育毛剤やシャンプーが薬局などで手に入ります。外用薬のため、かぶれなどの副作用に注意が必要ではありますが、試してみるのもよいでしょう。ミノキシジル外用と併用することもできます。
治療で考えられる副作用
ミノキシジルの副作用としては、かゆみ、フケ、皮膚炎があります。また、ミノキシジル外用開始後の1〜2カ月は初期脱毛といって、一見薬の開始で脱毛が悪化したかのようにみえる症状がでることがあります。
初期脱毛では、FAGAで進行した弱々しい異常な毛が抜けているだけです。治療を継続すれば、徐々に本来の強い毛が生えてくるようになります。初期脱毛で薬をやめてしまうと、抜けたまま生えてこなくなってしまいます。初期脱毛を乗り越えて、数カ月間治療に専念しましょう。
スピロノラクトンの副作用は、女性型乳房、乳房痛・腫れ、月経不順、性欲減退、頻尿、口渇、下痢、便秘などがあります。このような症状を感じた場合は、担当の医師に相談してください。
フィナステリドやデュタステリドはなぜ使わないの?
フィナステリドやデュタステリドは、AGA治療では一般的な薬剤です。しかし、FAGAへの効果は現時点でははっきりせず、女性への使用は原則認められていません。また、特に妊娠中の女性の場合、お腹の中の赤ちゃんが男児だった際に生殖器の奇形を起こす可能性があることが知られています。
破損したり濡れたりしているフィナステリドやデュタステリドの錠剤を触るだけでも、皮膚を通じて成分が吸収されてしまいます。妊娠中は絶対に錠剤を触らないように注意しましょう。
まとめ
FAGAは詳しいメカニズムや男性ホルモンとの関連性など不明な点が多い脱毛症です。また同じ脱毛症でも、FAGA以外に何らかの原因があって髪の毛が抜けている場合もあり、それらの病気を鑑別することも大切です。
脱毛症でお悩みの際には、ぜひ医師にご相談ください。治療薬も選択肢が少ないながら、ミノキシジル外用薬などは科学的にも有効性が示されたものです。即効性がある治療ではありませんが、根気強く治療を継続することで改善がみられます。
出典
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