女性AGAの可能性も?前髪の分け目が薄くなる原因について解説
「最近、髪の毛のボリュームが減ってきたと感じ、ふと鏡で頭を見ると分け目が広がっていた」
「前髪が薄くなり、分け目がパックリ割れている」
こんなことはありませんか?もしかするとFAGAのサインかもしれません。
髪は人目につきやすく、髪型一つで印象も変わってしまいます。一度でも分け目が薄いと感じてしまうと、日々の生活で自分の髪ばかり気にして、外出など日々の生活に支障をきたす方もいるでしょう。今回は、FAGAについてご説明していきます。
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FAGA(女性型男性型脱毛症)とは?
女性の薄毛、脱毛をFemale androgenetic alopecia (FAGA)といいます。AGAで薄毛となる主な原因は、男性ホルモンの増加です。女性では、男性ホルモンの量が増えるわけではなく、女性ホルモンの分泌が低下することで相対的に男性ホルモンの割合が高くなるためFAGAを引き起こします。
髪の毛周期について
1本1本の毛はそれぞれの毛周期を繰り返すことで成長します。毛周期は、成長期、退行期、休止期で構成されており、1回の毛周期は男性で3〜5年、女性で4〜6年とされています。
・成長期
毛が成長している段階のことを言います。髪の根本にある毛母細胞の細胞分裂が活発に行われます。90%程度の髪がこの成長期の段階です。正常な毛周期であれば、この成長期は3〜5年程度続きます。
・退行期
毛母細胞を栄養する毛乳頭の働きが低下し、毛母細胞の細胞分裂が停止するため髪の成長が遅くなります。期間は2、3週間程度です。
・休止期
毛乳頭が活動を停止し、縮小します。それにともない毛母細胞も栄養が送られず活動を停止し、髪の成長が完全にストップします。この休止期は2〜3カ月ほど続き、この間にあたらしい髪を作る準備をします。あたらしい髪ができはじめると、それに押し出されるように古い髪が抜け落ちます。休止期の髪は全体の10〜20%程度を占めています。
FAGAは、女性男性型脱毛症(Female Androgenetic Alopecia)の略称で、AGAの女性版です。おもにホルモンバランスが乱れてしまうことが原因です。
このように、髪は毛周期にしたがって生え変わりを繰り返すため、健康な頭皮であっても抜け毛は生じます。また、季節によって抜けやすい時期もあり、一日100本程度までの抜け毛であれば正常範囲です。しかし、毛周期が乱れると、成長期が1年ほどまで短縮してしまうため、髪が細く弱いまま退行期をむかえて抜け落ちます。そのため、髪の全体的なボリュームが減り、進行すると薄毛となってしまいます。
男性ホルモンが毛周期に影響を与える仕組みは以下の通りです。
- 男性ホルモンに含まれるテストステロンが5a還元酵素と結合し、ジヒドロテストロン(以下DHT)に変換される
- DHTが前頭部、頭頂部の毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体に結合する
- 受容体と結合したことによりTGF-βという脱毛因子が増加し、毛母細胞の増殖が抑制される
もちろんこれ以外にもありますが、AGAやFAGAのおもなメカニズムとして上記であるとされています。
5α還元酵素の量や、受容体の発現の程度は個人差があり、遺伝的な要因が大きいとされています。また、加齢によるホルモン低下や生活習慣の乱れ、ストレス、妊娠によるホルモンバランスの乱れでも、同様にテストステロンの濃度が相対的に上がり、脱毛を引き起こします。
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女性AGAについての詳細は、以下の記事もあわせてご覧ください。
女性AGA(女性型脱毛症:FPHL)とは? 症状や原因、対策方法をご紹介します
FAGAの治療
FAGAの治療で使用するお薬には、内服と外用、直接注射するものがあります。
ミノキシジル(外用薬・内服薬)
ミノキシジルは、血管を拡張し血流を改善する効果があります。血流が改善すると、毛母細胞や毛乳頭に栄養が届きやすくなるため、細胞分裂が活性化します。毛母細胞の細胞分裂が活性化すると、髪は強くなり、成長期の期間が延長するため発毛効果が生まれます。
ミノキシジルの外用薬は、日本皮膚科学会のAGA・FAGAガイドラインでも効果があると評価されている薬です。また、FAGAの治療薬はしっかりとしたエビデンスが確立されたものが少ないですが、ミノキシジルの外用剤はこのガイドライン上で唯一効果がしっかりと認められています。
ミノキシジルは、その血管拡張作用から以前は降圧薬として処方されていました。そのため、内服薬は副作用として血圧が低くなり、症状として立ちくらみやめまい、頭痛、動悸などを認めることがあります。くわえて、人によってはむくみが強くでる方もいるため、使用中にそのような症状があった場合は主治医に相談しましょう。
また、もともと低血圧であったり血圧が不安定な方や、心臓が弱い方などは避けた方が良いでしょう。妊娠中のミノキシジルの使用は、安全性が確立されていないため使用しないようにしましょう。
ミノキシジルを使用するとまず初めに初期脱毛という現象が起こります。これは、毛母細胞の細胞分裂が活発になることで休止期の髪が成長期に移行することで起こります。初めは髪が抜けてしまうため心配される方もいらっしゃいますが、これはミノキシジルが効果を示している証拠ですので根気よく治療を継続しましょう。
スピロノラクトン
スピロノラクトンは通常利尿薬として用いられる内服薬です。しかし、それ以外にもジヒドロテストステロン(DHT)とDHTの受容体の結合を阻害する作用や卵巣での男性ホルモン産生を抑制する効果もあり、FAGAではこの抗男性ホルモン効果に着目して使用されています。
副作用としては、低血圧やめまい、ふらつきを起こすことがあります。また、まれに乳房が痛くなったり、生理が不規則になる可能性があります。このような副作用がみられた場合は、医師に相談しましょう。
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詳しい治療方法については、以下の記事もあわせてご覧ください。
女性AGAの治療方法について解説
その他の前髪や分け目が薄くなる原因
女性の薄毛の原因は、AGAと同じように男性ホルモンの相対的増加であると最近まで言われていました。そのため女性の薄毛=FAGAと称されていましたが、さまざまな研究が進むにつれて女性の薄毛はホルモンバランス以外にも要因があり、男性のAGAとは原因や病態が異なっているのではないかと考えられるようになりました。
これにより以下のように使い分けされています。
- FPHL(Female Pattern Hair Loss) :FAGAを含む女性の薄毛全般
- FAGA(Female Androgenetic Alopecia):男性ホルモン増加に起因する女性の薄毛
FPHLとしての女性の薄毛の原因としては、以下が挙げられます。
- 過度なダイエット
- 生活習慣
- 円形脱毛症
- 間違ったヘアケアや負担のかかるヘアスタイル
- ストレス
- 妊娠 など
・過度なダイエット
若い女性には、痩せるために無理な食事制限をする方がいらっしゃいます。しかし髪を作るために必要な栄養が行きわたらず、健康で太い髪が生えなくなります。髪の栄養は食事に起因している部分が大きいため、過度なダイエットにより身体も髪もやせ細ってしまいます。
それだけではなく、生きていくために必要最低限の栄養素さえも取れていないと、卵巣は機能を一旦停止しエストロゲンの分泌が低下します。その結果、男性ホルモンの濃度が相対的に上昇し薄毛となってしまいます。
・生活習慣の乱れ
飲酒、喫煙、睡眠不足などの乱れた生活習慣も薄毛の原因となります。飲酒は適度であればあまり問題になりませんが、アルコールを分解するために身体は率先して栄養を使うため、髪のために使える栄養が枯渇します。タバコのニコチンは血管を収縮させる作用を持っており、頭皮の血管が収縮すると髪に必要な栄養が行き届かなくなります。
人は寝ている間に成長ホルモンを分泌します。成長ホルモンはインスリン様成長因子という髪の成長を促進する物質の生成を行うため、睡眠不足で成長ホルモンの分泌が低下するとインスリン様成長因子も減少し、髪の成長に影響を与えます。そして、身体はストレスを感じると血管を収縮させる傾向にあるため、薄毛の原因となります。
・円形脱毛症
円形脱毛症は、何らかの原因で自分の免疫が毛母細胞に反応し、攻撃してしまう自己免疫性疾患です。頭皮のどこにでも生じる可能性があり、全頭型の円形脱毛症もあります。円形脱毛症の治療は、ステロイドの外用や全身投与などで行い、ミノキシジルは効果がありません。また、進行すればするほど治療効果が薄くなってしまうため、早期発見と早期診断が重要となります。
・間違ったヘアケアや負担のかかるヘアスタイル
ヘアカラーやパーマなどを頻回に繰り返し行うと、そのぶん頭皮に負担がかかってしまいます。髪を引っ張るようなヘアスタイルを連日すると、牽引性脱毛症となり、圧がかかってしまった部分が薄くなります。
ヘアケアやヘアスタイルはおしゃれを楽しむためには欠かせないものですが、ヘアスタイルをたまにはおろした状態にしてみる、カラーをしたならパーマは休憩するなどして頭皮をいたわりましょう。
分け目の薄毛対策例を紹介
日常で行える分け目の薄毛対策は、
- 髪の毛を結ぶときは緩く結ぶ
- 分け目を定期的に変える
- 紫外線を予防する
- 健康的な生活を送る
などがあげられます。
前項で述べたように、頭皮に物理的な負担がかかると髪が抜ける原因となるため、髪を結ぶときはなるべく優しく結びましょう。髪の長い人はそれだけ重さが頭皮にかかるため、同じ分け目にしている期間が長ければ長いほど負担をかけてしまいます。月ごとに分け目を変えてみるなど工夫しましょう。紫外線も頭皮にダメージを与えるため、頭皮用の日焼け止めの使用や帽子を着用し、紫外線から頭皮を守りましょう。
生活習慣に関しても前項で述べましたが、適度な睡眠と健康的な食生活は髪だけでなく体全体の健康を保つために必要なことです。仕事や家事で多忙になりがちですが、健康を害してしまっては本末転倒です。これを機会に生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
まとめ
髪型ひとつで人の印象が変わります。そのため、一度自分の髪の分け目が薄いと感じてしまうと、人の目が気になり、社会的・精神的に苦痛になることがあるかもしれません。近年、女性の薄毛に関する研究も進み、治療を行うクリニックも増えてきているためFAGAという病名は以前と比較すると広く知れわたるようになりました。しかし、一概にFAGAといっても原因や生活スタイル、使えるお金も人それぞれです。原因をきちんと見出し、自分に合った治療スタイルを提供するクリニックや病院にかかりましょう。
また、薄毛は一朝一夕で治るものではありません。治療の効果を実感するまで半年はかかるといわれています。さらに、初期脱毛が起こる間は、初期脱毛と分かっていても精神的に苦痛を覚えてしまうでしょう。そのため、長期的に通院することが可能で、気軽に相談などができるところが良いと思います。一人で悩まずに、ぜひ医師に相談しましょう。
出典
※1 あたらしい皮膚科 第3版 清水宏 中山書店
※2 今日の皮膚疾患治療指針 第5版 医学書院
※3 皮膚科学 第11版 大塚藤男ら 金芳堂
※4 男性型および女性型脱毛診療ガイドライン 2017年版 日本皮膚科学会
※5 円形脱毛症 診療ガイドライン2017版 日本皮膚科学会
※6 ミノキシジルの表皮細胞に対する影響 蜂須賀裕志ら 西日本皮膚科 54(5) 733-736 1992
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