AGA治療薬の副作用でうつ病に? 服用に注意が必要な場合とは
男性型脱毛症(AGA)やAGA治療薬についていろいろと調べていると、「うつ病」と書いてあるページを見つけてびっくりされる方がいらっしゃるかもしれません。AGA治療薬とうつ病にいったいどんな関係があるのでしょうか。今回はフィナステリド、デュタステリドとうつ病について解説します。
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AGA治療薬を飲んでいる時に起こる抑うつ症状
AGA治療薬の中には、うつ病やうつ状態の人に注意が必要なものがあります。AGA治療薬を処方されたときに、医師からそのような説明を受けたことがある方もいらっしゃるかと思います。このパートでは、AGA治療薬とうつ病、うつ状態の関係について説明します。
AGA治療薬における抑うつ症状の発生頻度
AGA治療薬を使用してうつ病が起こった場合、それは副作用の可能性があります。
AGA治療薬であるデュタステリド、フィナステリドのいずれにおいても副作用として抑うつ気分が報告されています。
2021年、米国医師会が発行する世界的に信頼性が高い医学雑誌『JAMA Dermatology』に、フィナステリドの精神的な副作用を調査した論文が掲載されました。このことをきっかけに、日本で医薬品の審査等の業務を行っているPMDA(医薬品医療機器総合機構)が調査を行いました。
調査の内容を踏まえ、現在は添付文書において「フィナステリドとの因果関係は明らかではない」としながらも、うつやうつ状態などになりやすい可能性があると注意喚起されています。
なお、デュタステリドで抑うつ気分が発生する割合は1%未満です。
うつ状態の原因はAGA治療薬?
AGA治療薬とうつ状態の関連性についてはよくわかっていません。
上記の『JAMA Dermatology』の報告によると、AGA治療でフィナステリドを使用していた45歳未満の若い患者さんで、うつ病やうつ状態などの精神的な副作用が多いことが明らかになっています。この傾向は、他のAGA治療薬や、前立腺肥大治療のためにフィナステリドを使用している高齢者では認められませんでした。
報告バイアス(臨床試験データの偏り)の可能性が指摘されており、まだ確実なデータとはいえません。
うつ状態の増加は報道の影響も大きい
フィナステリドの報告バイアスですが、2012年に米国でうつ病との関連性が大きく報道されたことによるものといわれています。
この報道により、医師の報告が増えたほか、フィナステリドを使用した人が報道に影響されてうつ状態に陥ってしまった可能性があります。実際、『JAMA Dermatology』の報告においても、フィナステリドのうつ状態は2012年以降に増えたとしています。
AGA治療薬とうつ病の治療薬は一緒に飲める?
では、AGA治療薬とうつ病の治療薬は一緒に飲めるのでしょうか。
フィナステリド
併用を注意すべき薬はありませんので、うつ病の治療薬と一緒に飲むことが可能です。
※ただし、うつ病、うつ状態又はその既往歴などがある方は、必ず主治医にご相談ください。
デュタステリド
特定のうつ病の薬と一緒に飲むことにより、効果が強くなる可能性があります。うつ病の薬に限らず、いつも飲んでいる薬があれば医師に相談するようにしましょう。
ポストフィナステリドシンドローム(PFS)とは
フィナステリドは、1992年に前立腺肥大症の治療薬として米国で承認されてから、長く使われ安全性が確認されている薬です。
しかし、フィナステリドに関連した副作用が使用を中止しても続くことが報告されるようになり、ポストフィナステリドシンドローム(PFS)と名付けられました。
PFSに含まれる副作用としては、勃起不全や射精障害といった性的な副作用、女性化乳房や疲労などの身体的な副作用、抑うつや不眠といった精神的な副作用があります。
■PFSとして報告されている副作用の症状
PFSが起こる原因については、いくつかの仮説が考えられています。
仮説1:副作用への不安によるもの
ひとつはフィナステリドを使用することにより、副作用が生じるのではないかと不安になって、実際にそのような症状が出てしまうという仮説です。副作用に対する不安は、精神的な副作用を引き起こすきっかけになります。
AGAへの不安や悩みも副作用の原因?
AGAそのものが不安や悩みのタネとなり、精神的な副作用を引き起こすという説もあります。しかし、他のAGA治療薬では、このような副作用は起こらないことから否定されています。
仮説2:ホルモンバランスの乱れによるもの
フィナステリドの使用により、体内のホルモンバランスに変化が生じ、それが性的な副作用や精神的な副作用を引き起こすのではないかという仮説も考えられています。
仮説3:特定の遺伝的素因によるもの
PFSは訴える人の割合がそれほど多くないことから、特定の遺伝的素因を持った人で起こりやすいとする仮説もあります。
上記のような仮説以外にもさまざまな観点から研究が進められていますが、フィナステリドを使った患者さんと使っていない患者さんの直接比較をした研究が十分でなく、まだ結論は出ていません。
フィナステリドを使用する前に
うつなどの副作用やPFSは、すべての人に起こるものではありません。発生頻度は低いため過敏になる必要はありませんが、以下の方は使用前に医師に相談しておいた方がよいでしょう。
- うつ傾向の人
- 性機能に問題がある人
※DMMオンラインクリニックの提携医療機関では、うつ病など精神疾患の既往歴がある方へのAGAの診療はできかねます。予めご了承の程お願いいたします。
心配な方、気になる方は医師に相談を
AGA治療薬に限らず、薬にリスクはつきものです。もし気になる症状が現れた場合は、服用量や服用そのものを見直す必要があります。
AGAの薬を飲んでいて不安を感じたら、どんな小さなことでも医師に相談してください。
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出典
プロペシア錠添付文書(第4版)_添付文書_2023年8月改訂(第4版)
ザガーロカプセル添付文書(第1版)_添付文書_2021年8月改訂(第1版)
厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長:2023年8月29日薬生安発0829第1号「使用上の注意」の改訂について
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:2023年8月29日フィナステリドの「使用上の注意」の改訂について
Nguyen DD, et al. JAMA Dermatol. 2021;157(1):35-42.
Pereira AFJR, Coelho TOA. Post-finasteride syndrome. An Bras Dermatol. 2020;95(3):271-277.
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