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便秘に効く漢方薬とは

2023/03/15
監修:三上 修

日常生活において、便秘はおそらく誰もが一度は経験したことがあるトラブルのひとつだと思います。排便は健康を維持するためにかかせない条件ですが、日本においては大人から子供まで約15%の人が便秘に悩んでいるといわれています。

便秘への対策としては、食事や生活習慣、お薬、サプリメント、民間療法など様々な方法が知られています。色々なやり方を試していく中で、自分に合った方法を探していく必要があります。

今回は便秘対策の1つの手段として、漢方薬をご提案したいと思います。漢方薬にしかないメリットをいかしながら、ご自身の便秘対策のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

便秘とは?

便秘とはどのような状態を指すのでしょうか。
便秘だと感じる程度は、人によって異なりますが、国際的な便秘の定義(RomeⅣ基準
※1)を簡潔に説明すると以下のようになります。

・排便が1週間に3回以下
・排便時に強く力む必要がある
・排便後に便が残っている感じがする
・出した便が硬い

つまり、たとえ毎日排便があったとしても、スムーズな排便がない場合は便秘があると考えてよいということになります。

それでは、便秘の原因になりうる硬い便はどのようにできるのでしょうか。
口から取り込まれた食べ物は、胃や小腸で消化され、水分が多く含まれた状態で大腸にたどり着きます。大腸では適度に水分が吸収されることで、徐々に硬い便になっていきます。厳密には腸の水分を吸収する力などにも影響されるのですが、大まかに言うと、便が大腸に留まる時間の長さで便の硬さが決まってくると考えられます。

便秘症が問題になるのは、腹痛やお腹の張り(腹部膨満感)、食欲低下、痔、脱肛など、ほかの症状の原因になることです。さらに、慢性的な便秘がある場合に注意した方がよいことがあります。便秘として症状が出ているだけであって、実は背景に危険な病気(腸閉塞やクローン病、悪性腫瘍など)が隠れていることがあるのです。特に血液が混じる、腹痛を伴うような便秘については内視鏡検査やCT検査などで詳しく調べる必要があります。

 

便秘の原因

便秘の原因は、人によってさまざまです。そして同じ人でも便秘の原因が毎回同じというわけではありません。生活環境やストレス、食生活の変化によって便通の状態は日々変化すると考えた方がよいでしょう。便秘への対策を考えるうえで参考にしたいのが以下の2タイプの便秘、器質性便秘と機能性便秘です。※2

器質性便秘

 

器質性便秘とは、腸の中を便が通りにくい物理的な原因がある状態のことを意味します。
たとえば、大腸の内側に大腸癌などの大きな腫瘍ができると、腸の中が狭くなってしまいます。便が柔らかければ細い便となって排泄されますが、硬い便は狭い腸の中を通過できない場合があります。原因となる病気には以下のようなものがあります。

大腸癌

大腸の粘膜に発生する悪性腫瘍です。大腸ならどの部位にもできる可能性があり、日本でも年々増加傾向です。治療方法としては手術や化学療法があります。

クローン病

口から肛門までのすべての消化管に慢性的な炎症が起こる病気です。腹痛や血便、下痢や発熱などの症状がみられます。根治療法はなく、栄養療法や薬物療法などで症状の緩和を目指すことになります。

腸重積

腸の一部が隣り合った腸に入り込んでしまい、腸閉塞を来してしまう病気です。腸の壊死が疑われるような重症の場合は手術が必要になります。

虚血性腸炎

大腸が栄養を取っている血管の一部が狭くなったりして閉塞してしまい、腸に炎症が起こったり壊死してしまう病気です。絶食や点滴をしながら安静にすることで症状が改善していきます。

以上の内容をみても分かるように、器質性の便秘については基本的に治療を必要とするものが多いです。器質性便秘の可能性が低いときに考えるのが、機能性便秘です。

機能性便秘

機能性便秘とは、腸に物理的な異常や障害はみられず、腸が便を排泄する運動機能に異常がある状態を指します。腸は繊細な臓器といわれ、環境の変化やストレスなどで簡単にトラブルを起こします。また、お薬や腸の神経にダメージを与えるような病気によって、腸の動きが悪くなり便秘を引き起こすこともあります。原因になる代表的な病気には以下のようなものがあります。

 

<排便回数減少タイプ>

糖尿病や甲状腺機能低下症

糖尿病の高血糖によって腸の神経が障害を受け、便秘や下痢を起こしやすい状態になったり、甲状腺機能の低下によって、便の排泄に時間がかかり、便秘を起こす可能性があります。この場合、まずは糖尿病や甲状腺機能低下症の治療をしっかり行うことが重要になります。

過敏性腸症候群

複数の検査を行っても明らかな原因がないものの、便秘や下痢、腹痛を繰り返す病気です。頻回に下痢をするタイプと、逆に便秘が続くタイプに分かれます。腸の運動は自律神経の働きに影響を受けやすく、ストレスや睡眠不足などがこの病気の原因になるとされています。

薬剤性

便秘の原因になるお薬は複数あります。具体的には、抗コリン薬、精神病薬、オピオイド(麻薬系)、抗パーキンソン病薬、抗がん剤、降圧薬、制吐剤などです。便秘の原因と考えられるお薬をやめることで症状が改善する場合もあります。

 

<排便困難タイプ>

腹圧の低下

排便にはある程度のお腹の力が必要です。高齢の方や子供、または出産後の女性で腹筋の力が低下している場合は、便を押し出すための力が足りずに便秘となってしまうことがあります。

直腸感覚の低下や収縮力の低下

腸や肛門の手術をしたり、肛門や直腸の周りに病気がある場合には、便秘の原因となることがあります。便が肛門近くに来たことが分からず、排便の流れが止まってしまうのです。また、学校や職場で便意があってもトイレに行くのを我慢する習慣がある方も、このタイプの便秘になりやすいので注意が必要です。

漢方による便秘の治療

便秘に対する治療薬として、市販薬も含めるとかなり多くの種類の薬剤が存在しています。一般的に病院で処方される西洋薬の便秘薬は効き目が早く、そして確実に効果を感じられることが多いのです。しかし、逆に強く効きすぎて下痢になってしまう、またはお腹が痛くなってしまう方もいます。

一方で、漢方薬は、ゆっくり優しく効き目があらわれやすいことが特徴です。西洋薬であまり改善が無い場合、または西洋薬では効き目が強すぎるといった方は、西洋薬を減らして漢方薬を追加するか、漢方薬だけ用いてみてもよいでしょう。

便秘におすすめの漢方

この記事の中で便秘にはいろいろな原因があることが分かっていただけたかと思います。

漢方薬には便秘に効くお薬が多く存在します。代表的な漢方薬としては大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)や桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などがあります。しかし、その方の体質によって効く漢方薬と効きにくい漢方薬があるため、一概にこの漢方薬がよいと言い切れるものはありません。そこで、有効な代表的な漢方薬2つをご紹介したいと思います。

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

防風通聖散は、肥満の治療薬として知られていると思います。便秘薬に対しては、主に体格がよい方に有効といわれていますが、高血圧やむくみが伴い、体力がそれなりにある方であれば、それほど肥満でない方にも効くことがあります。※3

お腹周りに脂肪がつきやすい、もしくは脂肪がついている方におすすめの漢方薬です。ダイオウやボウショウなどのお通じをよくする生薬が含まれています。

麻子仁丸(ましにんがん)

麻子仁丸は、高齢者や体力が低下した方、大きな病気で療養後の方などの便秘に対して有効といわれている漢方薬です。※4
このような体質の方は、便は硬く、乾燥していることが多いです。また、西洋薬などの下剤では効きすぎて下痢になってしまうことがあります。その際にこちらを使用してみるのもよいでしょう。こちらもダイオウというお通じをよくする生薬成分が含まれています。

まとめ

この記事では便秘とは何か、便秘症の原因について触れたうえで、便秘に効果があると知られている漢方薬を2種類ご紹介しました。漢方薬は体質に合うものを服用した場合、便秘に対して一定の効果がみられる可能性があります。効き方によっては漢方薬だけ服用してもよいですし、西洋薬と併用することも可能です。ぜひ自分にあった便秘の対処方法を探してみてください。

出典

※1 Rome Ⅳ criteria

※2 慢性便秘症診療ガイドライン 2017年

※3 松生恒夫ら 大腸メラノーシスを認める常習性便秘症に対するポリデキストロースの効果、漢方と最新治療 1996;5:195-9

※4 Cheng CW, et al. Efficacy of a Chinese herbal proprietary medicine (Hemp Seed Pill) for functional constipation. Am J Gastroenterol. 2011 Jan;106(1):120-9

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