糖質制限で痩せないのはなぜ?|体重が減らない原因と見直しポイント
糖質ダイエットは、「ご飯を抜けば痩せる」と考えて始める人が多い一方で、「思うように体重が減らない」「リバウンドしてしまった」と悩む声もあります。糖質制限は、血糖値やインスリンの働きを利用した合理的なダイエット法ですが、やり方を誤るとかえって痩せにくくなるケースがあります。
この記事では、糖質制限の仕組みや体重が落ちにくくなる理由、無理なく続けるためのポイントを解説します。あわせて、医師によるサポートを取り入れたメディカルダイエットという選択肢についても紹介します。
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糖質制限で体重が減らない主な原因

糖質を控えているのに体重が思うように減らない、と感じる人も少なくありません。ここでは、減量が進まない理由や停滞に至る背景を整理し、つまずきやすいポイントをまとめます。
【1】摂取カロリーが減っていない
糖質を減らしても、脂質やタンパク質の量が増えると、1日の摂取カロリーがほとんど変わらない場合があります。特に脂質は1gあたり9kcalとカロリーが高い栄養素です。量が少し増えただけでも、思った以上にカロリー過剰となってしまう場合があります。
糖質制限中に、ナッツやチーズなど「低糖質のおやつ」を取り入れている人も多いでしょう。これらは糖質は少ないものの脂質量が多く、カロリーも高めです。減量がうまく進まないときは、糖質量だけでなく、食事全体のカロリー量も一度見直してみましょう。
【2】初期は水分が減るだけで、脂肪はまだ減っていない
糖質制限を始めると、まず体内に蓄えられたグリコーゲンがエネルギー源として使われます。グリコーゲン1gにはおよそ2.7gの水分が結合しており、分解される過程で水分も一緒に失われます。これが体重が早く減ったように感じる主な理由です。
体内に蓄えられるグリコーゲンは約350g前後とされています。結合している水分を含めると、初期段階で約1kgほど体重が落ちる場合もありますが、脂肪が減ったわけではありません。糖質制限を続けるうちにグリコーゲンと水分の変動が落ち着き、ある時期から体重の変化が小さくなることがあります。
【3】筋肉量と代謝が落ち、消費エネルギーが減る
糖質を極端に控えると、体は足りないエネルギーを補うために、筋肉のたんぱく質を分解して利用するようになります。肝臓や腎臓では、分解されたアミノ酸からブドウ糖を作る「糖新生」が進みます。この状態が長く続くと、筋肉量が減って基礎代謝が下がり、体重の減りが鈍くなる場合があります。
【4】ストレスや睡眠不足でホルモンの働きが乱れる
ダイエット中は、ストレスや睡眠不足が重なるとホルモンの働きが乱れやすくなります。ストレスが続くと、副腎から「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。コルチゾールは脂肪やタンパク質を分解し、エネルギーを生み出す方向へ働きます。しかし、コルチゾールの分泌が続くと、脂肪を蓄えやすい状態に傾く場合があります。
睡眠不足は食欲を抑えるホルモン「レプチン」を減らす一方で、食欲を増進させる「グレリン」を増やします。その結果、空腹感が強くなり、間食や食べ過ぎにつながります。こうした変化が積み重なると、食事を意識していても減量が進みにくい状態になってしまいます。
【5】脂肪燃焼への切り替えがうまく進まない
糖質を減らすと、体は脂肪を分解してケトン体を作り、糖の代わりにエネルギーとして使うようになります。ただし、糖質量が中途半端な状態だと、この切り替えがうまく進まないことがあります。
切り替えの途中には、
- 空腹感が強くなる
- 集中力が続きにくくなる
- 体のだるさを感じる
などの変化が起こる場合があります。これはケトン体が全く作られていないわけではなく、体がまだ使いこなせていない段階です。糖質量を一気に減らしすぎず、少しずつ調整することが大切です。
こうした要因が重なると、「糖質は減らしているのに体重が減らない」という状態になる傾向があります。次の章では、糖質制限の仕組みを整理しながら、どこを見直すとよいか確認しましょう。
糖質制限ダイエットの仕組み|体の中で起きている変化

糖質制限を理解するには、体の中で起きる変化を知っておくと役立ちます。糖質を控えると、エネルギーの使われ方や代謝の流れが変わります。仕組みを知ることで、無理のない方法を選びやすくなります。
糖質を減らすと体で何が起こるのか
糖質制限は、食事の糖質量を控えて血糖値の上昇を緩やかにする方法です。糖質が多い食事は、血糖値が上がり、インスリンの分泌が強まります。インスリンは血糖を細胞に取り込むとともに、余った糖を脂肪として蓄える働きを持っています。
糖質の量を調整するとインスリンの反応が落ち着き、脂肪が使われやすい状態に近づきます。つまり糖質制限ダイエットとは、「糖を減らして脂肪を燃やしやすい状態を作る」というダイエット法です。
糖質と炭水化物の違い
炭水化物は「糖質」と「食物繊維」を合わせた総称です。糖質はエネルギー源として利用され、食物繊維は消化・吸収されず腸内環境を整える役割があります。炭水化物を過度に減らすと、糖質だけでなく食物繊維も不足しやすくなります。
脂肪がエネルギーとして使われるまでの流れ
糖質を制限すると、まず蓄えていたグリコーゲンがエネルギーとして使われます。グリコーゲンが減ってくると、体は脂肪を分解してエネルギーを得る「脂肪燃焼モード」に切り替わります。この過程でケトン体が作られ、糖の代わりに脳や筋肉のエネルギー源として利用されるようになります。
このような代謝の変化には時間がかかります。糖質の摂取量を調整しながら継続することで、脂肪が使われやすい状態に移行していきます。
糖質を抜きすぎた場合のデメリット

糖質を極端に控えると、体や心の働きに負担がかかる場合があります。エネルギー不足や栄養の偏りが生じると、生活にも影響が出やすくなります。この章では、糖質を減らしすぎたときに起こりやすい変化の例を見ていきます。
エネルギー不足による体調面への影響
糖質を大きく減らすと、体や脳のエネルギー源が不足します。脳は主にブドウ糖をエネルギーとして使うため、集中力の低下や気分の不安定さを感じやすくなります。
エネルギー不足が続くと、筋肉のタンパク質を分解して補おうとする流れが強まります。その結果、筋肉量が減り、基礎代謝が下がる可能性があります。炭水化物を減らしすぎると食物繊維も不足するため、便秘や腸内環境の変化が起きやすくなります。
「糖質制限食は短命」説は本当か?
一部の研究で、糖質制限食が寿命を縮める可能性が指摘されています。ただし、これらは観察研究によるもので、糖質制限そのものが寿命に直接影響したとは言い切れません。
低糖質食でも、動物性食品に偏ると死亡リスクが上昇したとする報告がある一方で、植物性のたんぱく質や脂質を中心とした場合には、死亡リスクの低下が示された研究もあります。糖質制限を行うかどうかだけでなく、どのような食材を組み合わせるかが健康に関わると考えられています。
更年期は糖質制限の影響を受けやすい
更年期には女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌が減少し、筋肉量や代謝が低下しやすくなります。エストロゲンは筋肉維持や脂肪燃焼を助けるため、糖質を控えすぎると疲労感が増す場合があります。
もともと代謝が落ちやすい時期に極端な糖質制限を行うと、筋肉量の減少や基礎代謝の低下が進みやすくなります。更年期のダイエットでは、糖質を必要以上に減らさず、タンパク質やビタミンB群など代謝を支える栄養素を意識して摂りましょう。
正しい糖質コントロールのコツ

健康的に痩せるためには、糖質をただ減らすだけでなく、「上手に摂る」ことも大切です。ここでは、糖質の適量や質、食べ方の工夫など、無理なく続けられる糖質コントロールの基本を解説します。
適度な糖質摂取が筋肉と代謝を守る
糖質をほとんど摂らない状態が続くと、筋肉量や基礎代謝が落ち、かえって脂肪が減りにくくなる場合があります。
健康的に痩せるためには、必要最低限の糖質を摂りましょう。特に、運動量が多い日や活動時間が長い日は、筋肉の回復やエネルギー維持に糖質が役立ちます。糖質を控える場合は、1食あたりおにぎり半個程度(約40〜50g)を目安に、極端な制限にならない範囲で調整しましょう。
糖質の“質”に注目する|GI値を意識した食事
糖質制限では、量だけでなく“質”も意識する必要があります。GI値(グリセミック・インデックス)は、食品を摂取した際に血糖値がどの程度上昇するかを示す指標です。GI値が高いほど血糖値が急上昇し、脂肪を溜め込みやすい状態になります。
◆GI値が高い食品例
- 白米
- パン
- じゃがいも
- にんじん など
◆GI値が低い食品例
- 全粒粉パン
- そば
- りんご
- 葉物野菜 など
糖質を完全に抜くのではなく、血糖値を上げにくい“良質な糖質”を選ぶように心がけましょう。
タンパク質・脂質とのバランスをとる(PFCバランス)
糖質だけに注目すると、他の栄養素が偏る場合があります。タンパク質は筋肉や代謝酵素の材料となり、脂質はホルモンや細胞膜に関わる栄養素です。どれか一つを減らしすぎると、代謝や体調に影響が出ることがあります。
食事全体のバランスを整える目安として、タンパク質:脂質:炭水化物=2:3:5(エネルギー比)を参考にすると、代謝を保ちやすくなります。糖質だけを切り離して考えず、3つの栄養素のバランスを意識しましょう。
食べ方とタイミングの工夫
人間の代謝は日中に高く、夜になると低下します。糖質は朝や昼に摂るほうが活動エネルギーとして消費されやすくなります。
また、空腹時間が長くなりすぎると血糖値が下がり、集中力が落ちたり、反動で食べ過ぎてしまったりすることがあります。1日の活動量や体調に合わせ、適切なタイミングで摂取しましょう。
1日の糖質摂取量の目安
糖質の最低必要量は、およそ100g/日と推定されています。脳だけでも1日に約75gのブドウ糖を使い、そのほかにもブドウ糖を必要とする組織があるためです。ただし、これは生理学的な最低量を示したもので、体調を保つために十分な量とは限りません。
糖質制限を進める場合でも、1食あたり40〜70g(1日120〜200g程度)の範囲で調整すると、エネルギー不足や体調の乱れを避けながら続けやすくなります。食事全体のバランスを確認しながら、この範囲で調整していきましょう。

※上記の糖質量は、日本食品標準成分表2020年版(八訂)の値(炭水化物量から食物繊維量を差し引いた「糖質量」)を参考にしたおおまかな目安です。実際の糖質量は商品や盛り付け量によって前後します。
メディカルダイエットという選択肢

自己流のダイエットで行き詰まったときは、医師のサポートを受けると自分に合った方法を見つけやすくなります。ここでは、医師の支援を受けながら進める「メディカルダイエット」について紹介します。
自己流ダイエットに限界を感じたら、医師のサポートを
糖質制限を続けていても、「思うように体重が減らない」「体調がすぐれない」といった壁に直面することがあります。医師の支援を受けると、現在の食事内容や生活習慣を踏まえた上で、無理のない減量計画を立てられます。
GLP-1など医療的アプローチの活用
ダイエットが停滞してしまうときは、医療の力を借りる方法もあります。GLP-1受容体作動薬は、もともと糖尿病治療に用いられてきた薬です。食欲を抑え、血糖値の上昇をゆるやかにする作用によって、食事量が自然に減りやすくなります。
ただし、効果には個人差があり、使用中は低血糖や胃腸症状などの副作用が出ることもあるため、使用する際は医師の管理のもとで進める必要があります。食事や運動と組み合わせることで、より効率的に減量を進めやすくなります。
メディカルダイエットのポイント
メディカルダイエットは、薬だけに頼って体重を減らす方法ではありません。医師が体質や既往歴、生活習慣などを確認し、無理のない減量をサポートするのが基本です。
自己判断で薬を使用すると、副作用のリスクが高まります。必ず医師の指導のもとで進めましょう。生活習慣の見直しを土台としながら、医学的サポートを上手に取り入れることがポイントです。
よくある質問と回答

糖質制限を始めると、食事量や体調の変化について不安が生じる場合があります。ここでは、よく寄せられる疑問を整理し、改めて基本的な考え方をまとめました。
Q.糖質制限はいつから痩せ始める?
A.糖質を控え始めると、まず体内の水分量の変化によって体重が減ることが多く、初期の体重減少は水分が主な要因です。
脂肪が減ってくるタイミングやペースには個人差がありますが、数週間単位で少しずつ変化していくと考えるとよいでしょう。
Q.炭水化物を抜いても痩せないのはなぜ?
A.糖質を控えていても、脂質やタンパク質の量が増えると、摂取エネルギーが思ったほど減らない場合があります。さらに、極端な糖質制限では筋肉量が落ち、消費エネルギーが少なくなることもあります。
Q.1日50gに糖質を制限すれば痩せる?
A.糖質量を1日50g程度まで減らす方法は、体への負担が大きく、エネルギー不足や筋肉の分解につながる可能性があります。また、糖質を制限しても脂質などでカロリーの収支がプラスであれば太ります。糖質だけではなくトータルのカロリーで考えることが重要です。体格や活動量によって適切な糖質量は異なりますが、1日120〜200g前後を目安に調整するとよいでしょう。
Q.「糖質制限食は短命」って本当?
A.糖質制限と寿命の関係を指摘した研究はありますが、食事内容や生活習慣など、ほかの要因の影響も大きく、直接の因果関係は示されていません。本文で解説したように、糖質量だけでなく、動物性・植物性食品のバランスも含めた食事全体の構成が重要です。
Q.夜ご飯に白米を食べないとどうなる?
A.夜に糖質をほとんどとらない状態が続くと、睡眠の質や代謝リズムが乱れる場合があります。玄米や野菜など、消化吸収がゆるやかな糖質を取り入れると、体のエネルギー代謝や睡眠の安定に役立つ可能性があります。
糖質制限を続けるために意識したいこと

糖質制限は、仕組みを理解した上で適切に進めれば、減量につながる方法です。しかし、極端な制限は代謝低下や筋肉量の減少を招き、思うように体重が動かないこともあります。体質や生活習慣によって結果の出方は変わるため、糖質だけに注目せず、食事全体のエネルギー量や栄養バランスを意識しましょう。
自己流で糖質制限を続けても成果が出ない場合は、医師のサポートを受けるメディカルダイエットという選択肢もあります。生活習慣の見直しをベースに、自分に合った方法で無理なく続けることが、健康的なダイエットにつながります。
出典
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