新型コロナウイルス感染に伴う後遺症を症状別に解説
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は発熱や咳などの呼吸器症状を引き起こしますが、ほとんどの場合、数日から数週間で時間経過とともに症状が改善します。しかし、一部の方で何ヶ月経っても症状が持続したり、新しい症状が出てきたり、症状が消失した後に再び生じたりすることがあります。これを新型コロナウイルス感染症の後遺症(罹患後症状)といい、さまざまな症状が起こることがわかってきました。この記事では後遺症の症状別に診断や対処法などについて詳しく解説します。
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新型コロナ後遺症の発症原因
新型コロナウイルス感染症の後遺症がなぜ起こるのか、そのメカニズムについてはまだ不明な点も多いですが、
・ウイルス感染により肺などの組織が直接的にダメージを受けること
・微量なウイルスが持続的に感染すること
・ウイルス感染後に免疫の調節機能が乱れて炎症が起こること
・ウイルスにより血液が固まりやすくなり血栓症が起きやすくなること
などの原因が、単独あるいは複合的に絡み合うことで後遺症を引き起こすと考えられています。
新型コロナ後遺症の主な症状や診断、対処法
新型コロナウイルス感染症の後遺症は多彩な症状を引き起こすことが知られています。頻度が多いものは倦怠感や呼吸困難、筋力低下、集中力低下、味覚・嗅覚障害、脱毛・皮疹などがあり、臓器別にまとめると下記のようになります。
・呼吸器症状:呼吸困難、咳、痰、息切れ、など
・循環器症状:息切れ、動悸、胸の痛み、など
・味覚・嗅覚症状:味やにおいを感じない、味やにおいを以前と違うように感じる、など
・神経症状:疲労感、倦怠感、頭痛、記憶障害、集中力低下、睡眠障害 など
・皮膚症状:発疹、脱毛 など
・痛み:筋肉痛、関節痛 など
これらの症状が2ヶ月以上持続し、その他疾患による症状ではないと考えられた場合に後遺症と判断されます。次はそれぞれの症状について詳しく解説します。
呼吸器症状
症状:
呼吸困難や咳、痰、喉の痛みなどの症状が2〜3ヶ月以上続きます。
診断:
胸部レントゲン、血液検査、呼吸機能検査や心電図などを行い、肺炎や心不全といった循環器疾患・呼吸器疾患ではないことを確認します。必要に応じて胸部CT検査を行いますが、コロナウイルス感染後はすりガラス影などの炎症が起こった後だと示す異常所見を認めることがあります。
診察や検査で明らかな異常が認められなかった場合でも、うつや不安症によって呼吸器症状が起こることもあるので、問診で疑われた場合は心療内科や精神科の受診が必要になります。
対処法:
もし後遺症以外の原因が見つかった場合は、その疾患に対する治療を行います。検査で明らかな異常なく、コロナウイルス後遺症と考えられた場合は経過観察、対症療法で様子を見ます。重症のコロナウイルス感染の後遺症や高齢者では運動・呼吸のリハビリテーションが有効なケースもあります。
循環器症状
症状:
新型コロナウイルスは心臓に障害を与えることが知られており、心筋障害や心膜炎、心筋炎を引き起こします。これにより、息切れ、胸部不快感、動悸などの症状が新型コロナウイルス感染後に数ヶ月持続します。
診断:
胸部レントゲン、血液検査、心電図や心エコー図検査などを行い、心臓の機能を詳しく評価するとともに、後遺症以外の虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)、肺血栓塞栓症などの循環器疾患が起きていないかどうかを調べます。
対処法:
新型コロナウイルス後遺症による心膜炎に対しては、非ステロイド性抗炎症薬などで薬物治療を行います。心筋炎が見つかった場合は、心不全に対する薬物治療を行いながら慎重に経過を観察します。
味覚・嗅覚症状
症状:
嗅覚や味覚の異常は新型コロナウイルス感染に特徴的な症状として注目されました。多くの場合、嗅覚や味覚の症状は感染したあと早い段階で改善しますが、数ヶ月持続するケースも数%あることがわかっています。具体的には、においが全くしなかったり、弱くなったりする以外にも、においがないところでもにおいを感じたり、以前と違うようににおいを感じたりする症状が表れます。
味覚に関しても、味を全く感じなかったり、弱くなったりする他に、常に口の中が苦く(甘く)感じたり、以前と違うように味を感じたりするようになったりします。
診断:
嗅覚の異常については、耳鼻咽喉科で鼻の内部を観察する内視鏡による検査やCT検査、嗅覚検査などを行い、副鼻腔炎の有無を調べ、嗅覚の異常を客観的に判断します。
味覚の異常については、亜鉛やビタミンB群の欠乏、口の中が乾燥するシェーグレン症候群などの疾患がないかを診察や血液検査によって調べます。
対処法:
嗅覚の異常については、副鼻腔炎が見つかった場合はステロイドや抗生剤などで治療を行います。検査で明らかな異常なく、コロナウイルス後遺症と考えられた場合は基本的に経過観察を行います。
味覚の異常についても、後遺症以外の原因が見つかった場合はその疾患の治療を行います。検査で異常がなく、後遺症と判断された場合は経過観察を行いますが、亜鉛の値が低いことが多く、その際は亜鉛製剤を内服します。
嗅覚・味覚障害に関しては、最近、漢方薬治療で一定の効果が見られており、当院のコロナ後遺症外来でも漢方薬による治療を基本としています。
神経症状
症状:
疲労感や頭痛、しびれ、記憶障害、集中力の低下、睡眠障害などの神経症状は新型コロナウイルス感染で約20%の頻度で起こり、感染後も数ヶ月に渡る長期間症状が持続することも多いといわれています。
診断:
基本的には詳細な問診と身体診察により診断を行っていきます。必要に応じて、頭部MRI検査、脳波、脳脊髄液検査を行い、後遺症以外の疾患がないかどうかを詳しく調べます。記憶障害や集中力の低下といった症状は、うつ病やアルツハイマー病の症状の一部の可能性、しびれの症状はギラン・バレー症候群や脊髄炎といった後遺症以外の原因でおこる可能性があるので、慎重な診断が必要です。
対処法:
他の症状と同様に、後遺症以外の原因が見つかった場合はその疾患の治療を行います。検査で異常がなく後遺症と判断された場合、現時点では有効性が確立されている治療薬がないため、生活に対するアドバイス、リハビリテーションなどの対症療法や心理的サポートを行っていきます。
皮膚症状
症状:
新型コロナウイルス感染症では皮膚に発疹を認めることがあり、頻度は高くないものの後遺症として数ヶ月続くケースが報告されています。全身に赤いぶつぶつの発疹ができたり、水ぶくれができたり、つま先にしもやけのような病変ができたりと、多彩な皮膚症状を認めます。また、感染後数ヶ月経ってから脱毛症が約20%の感染者に表れることもわかっています。
診断:
基本的には皮膚科医による診察により行われます。
対処法:
皮膚の発疹に対しては、ステロイドの外用薬(塗り薬)や、重症のケースではステロイドの内服薬により治療を行います。脱毛症の場合、基本的には自然治癒すると考えられていますが、必要に応じて他の脱毛症の治療にも用いられるミノキシジルの外用やパントガールの内服などで治療を行うこともあります。
まとめ
最近のコロナ後遺症の分析では、デルタ株以前に多かった嗅覚・味覚障害が少なくなり、デルタ株の際には脱毛が特徴的でした。オミクロン株が中心となって以降は、頭痛・不眠症・集中力低下といった精神神経症状と呼吸困難・せきといった呼吸器症状が中心となっています。また、最も見られることが多い倦怠感は、変異株のいかんを問わず、常に最多です。いずれも対症的に対応しますが、治癒までに数か月を要することも少なくありません。
漢方薬治療において、特に倦怠感や精神神経症状の安定などについてはその有効性が示されており、治療期間が長期になることも踏まえ、ますます積極的に使われていくものと考えています。
出典
新型コロナウイルス感染症 罹患後症状のマネジメント
新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)について
日経サイエンス 2011.11月号 特集「コロナ後遺症」
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