グルテンフリーダイエットは本当に痩せる?|効果と注意点を解説
SNSなどでは「グルテンフリーの食生活を取り入れたら痩せた」という投稿を目にします。パンやパスタなどの小麦製品を控えると、カロリーの摂取量が抑えられ、その結果として体重が減る場合があります。こうした一時的な変化が「痩せる」の根拠として広まっている背景です。
この記事では、グルテンフリーダイエットの正しい考え方と注意点、続けやすい取り入れ方について解説します。
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グルテンフリーダイエットとは?|本来の目的と仕組み

グルテンフリーダイエットとは、グルテンを含む食品を一切、またはほとんど食べない食事法です。本来はセリアック病やグルテン過敏症の人のために考えられた方法ですが、近年は健康志向やダイエット目的で実践する人も増えています。
グルテンとは
グルテンとは、小麦や大麦、ライ麦など穀物に含まれるタンパク質の一種です。水と混ぜ合わせることで、パンやパスタのもちもちした食感が生み出されます。もともと体に害がある成分ではありませんが、人によっては摂取後に消化不良やお腹の張りなどを感じる場合があります。こうした不調をきっかけに、グルテンを控える食生活が注目されるようになりました。
セリアック病・グルテン過敏症の治療目的で広まった
グルテンフリーは、医療現場におけるセリアック病やグルテン過敏症の食事療法として広まりました。セリアック病とは自己免疫疾患の一種で、グルテンを摂取すると小腸に炎症が起こり、お腹の不調を引き起こします。悪化すると、栄養が消化・吸収しにくくなります。
また、小麦タンパク質に対するアレルギー疾患もあります。グルテンを摂取すると、数分から数時間で痒みや蕁麻疹(じんましん)、腹痛、下痢といった症状が出現するのが特徴です。小麦アレルギーや、運動後に重いアナフィラキシーを起こす「小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)」などが知られています。
※これらは医療的な治療が必要な疾患であり、一般的なダイエット目的で行うグルテンフリーとは目的が異なります。
「健康的・痩せる」と誤解されやすい理由
グルテンフリーダイエットは、メディアやSNSで「健康的」「痩せやすい」と取り上げられるようになり、健康な人の間でも関心が高まっています。実際に、パンやパスタを控えることで摂取カロリーが減り、体重が減少するケースもあります。
ただし、これはグルテンを抜いたからではなく、炭水化物や糖質の摂取量が減ったことによる影響です。グルテンを抜けば誰でも痩せるわけではありません。食事全体のバランスを優先しましょう。
グルテンフリーで痩せる理由と痩せない人の特徴

グルテンフリーを試してみて「痩せた」と感じる人もいれば、あまり変化がない人もいます。この違いは、グルテンそのものの影響ではなく、カロリーの摂取量や体質、生活習慣の違いなどによって生じます。
グルテンを抜いて痩せるのは「炭水化物の摂取量が減る」ため
グルテンは、パンやパスタ、ラーメンといった小麦を原料とした食べ物に含まれています。これらを控えると、炭水化物の摂取量が減り、カロリーも抑えられるため結果として体重が落ちる人もいます。グルテンを避けても高脂質・高カロリーの食事が続けていれば、体重が増える場合もあります。
変化を感じやすいのは一部の体質
グルテンフリーダイエットで変化を感じやすいのは、お腹の調子が気になっている人や、炭水化物を摂りすぎる傾向のある人です。炭水化物を控えることで、血糖値スパイクと呼ばれる食後の急激な血糖値上昇とその後の低下が抑えられ、空腹感が安定しやすくなります。その結果、間食や食べ過ぎを防げる場合もあります。
SNS等で話題の「2週間チャレンジ」の変化とは
SNSでは、2週間グルテンフリーを試したら「体が軽くなった」「お腹まわりがすっきりした」といった体験談を見ることがあります。こうした変化の多くは、パンや麺類など炭水化物を減らした影響による一時的な体重減少や、むくみの改善が要因と考えられます。
グルテンフリーの生活習慣が直接的な痩身効果をもたらす科学的根拠は乏しく、長期的に体重を維持するためには、食事全体のバランスや運動習慣の改善が必要です。
グルテンフリー中に避けたい食品・おすすめの食品

グルテンフリーダイエットを成功させるには、避けるべき食品と上手な食材の選び方を正しく理解しましょう。控えた方がよい食品や、代わりに選びやすい食材、加工食品を選ぶときの注意点について紹介します。
避けた方がよい食品
グルテンは主に小麦や大麦、ライ麦などの穀物に含まれます。以下は控えたほうがよい食品です。
- パン
- パスタ
- うどん
- ラーメン
- ピザ
- ケーキ・クッキーなど
カレーやシチューのルウには小麦粉が含まれている場合があります。購入時は成分表示を確認しましょう。
おすすめの食品
グルテンを控えていても、食材の選び方を工夫すれば、栄養バランスを保ちつつ満足感のある食事が楽しめます。
- 主食:玄米、雑穀米、十割そば、オートミール
- 主菜:魚、肉、卵
- 副菜:豆腐、野菜、芋類、豆類
- おやつ:ナッツ、ヨーグルト、フルーツ
グルテンフリー加工食品の「落とし穴」
グルテンフリーと表示されている食品が、必ずしも健康的とは限りません。小麦粉の代わりに使われる米粉やでんぷんは糖質量が多く、カロリーが高くなる傾向があります。
また、食感や風味を補う目的で、油脂や砂糖を加えている製品もあります。加工食品を選ぶ際には成分表示を確認し、なるべくシンプルな原材料の製品を選ぶようにしましょう。
グルテンを抜いたときの体の変化とリバウンド対策

グルテンを控えると、体にはポジティブな変化があらわれることもあります。ただし、やめた直後に体重が戻るなど、リバウンドのリスクも指摘されています。それぞれ詳しくみていきましょう。
体感として多い変化
グルテンを控えると「体が軽くなった」「お腹の張りが減った」と感じる人がいます。これは、パンやパスタなどの炭水化物や脂質の多い食品を控えると、消化の負担が軽くなるためと考えられています。とはいえ、体質や食生活の違いなどによって感じ方は変わるため、全ての人に当てはまるわけではありません。
リバウンドリスクと回避法
グルテンフリーダイエットをやめた直後に、パンや麺類などの炭水化物を急に再開すると、カロリーの摂りすぎで体重が増えてしまう場合があります。また、極端な制限を長く続けるとストレスがたまり、反動で過食に陥るケースも少なくありません。
リバウンドを防ぐには、「完全に除去する」よりも、量や頻度を意識して調整しましょう。炭水化物を適度に取り入れながら、全体のバランスを整えることで、長期的な体重維持につながります。
グルテンフリーのメリット・デメリット|続ける前に知っておきたいこと

グルテンフリーの食事は、食習慣の見直しにつながる一方で、食材や栄養のバランスに注意が必要です。グルテンフリーを無理なく続けるためのポイントを紹介します。
メリット
グルテンを控えると、食べ物を消化する際の負担が和らぎます。パンやスイーツなどを控えることで、糖質や脂質の摂取量も自然に抑えられ、肌の調子や体のすっきり感などを感じる人もいます。また、食事内容を見直すきっかけになり、健康への意識が高まる点も大きなメリットです。
【主なメリット】
- お腹の張りや違和感が軽減する場合がある
- 肌の調子が整いやすくなり、体が軽く感じることがある
- 糖質や脂質の摂取を自然に抑えられる
- 食習慣を見直すきっかけになる
デメリット
グルテンを控えた食生活を目指す場合、食品の選択肢が限られるのがデメリットの一つです。外食やコンビニ弁当、スーパーの惣菜が購入しにくくなるかもしれません。また、米粉やグルテンフリー食品は価格が高いため、経済的な負担になる可能性もあります。栄養のバランス面でも注意が必要です。小麦を完全に除くと食物繊維やビタミンB群が不足しやすくなり、腸内環境の悪化につながる可能性もあります。
【主なデメリット】
- 外食や中食で選択肢が限られる
- 食費が高くなりやすい
- 栄養バランスが偏る恐れがある
- 極端な制限を続けると、ストレスやリバウンドにつながる
「日本人には意味がない」と言われる理由
グルテンフリーダイエットは欧米で生まれた食事法です。日本では米を主食とする人が多く、小麦の摂取量は欧米人の約3分の1といわれています。そのため、健康な日本人がグルテンを抜いても、体調や体重に大きな変化がみられないケースが多いようです。
もっとも、セリアック病やグルテン過敏症と診断された人にとっては、グルテンを避けることが治療の一環となります。目的を明確にし、体質や生活スタイルに合わせて取り入れましょう。
ダイエットの基本は「カロリー管理×運動」

グルテンフリーダイエットで効果を実感するためには、グルテンを抜くだけでなく、摂取カロリーと栄養バランスを意識しましょう。食事内容を整えて適度な運動を組み合わせると、より健康的に体重を管理できます。
食事バランスとPFC管理の重要性
グルテンフリーダイエットを実践する際は、「タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)」のバランス、いわゆるPFCバランスを考慮します。健康を維持するためのPFCバランスは、タンパク質13〜20%、脂質20〜30%、炭水化物が50〜60%が推奨されています。
特にタンパク質は、筋肉量を維持し基礎代謝を保つ上で欠かせません。また、炭水化物を極端に減らすと、エネルギー不足や集中力の低下を招く恐れもあります。食事は「主食・主菜・副菜」を揃え、栄養の偏りを防ぎましょう。
パンとお米はどちらが太りやすい?
同じ主食でも、パンはごはんに比べてカロリーが高めです。例えば、食パン1枚(6枚切り・60g)は約160kcal、対してごはん1膳(150g)は約230kcalです。一見するとごはんの方が高カロリーですが、パンはバターやジャムなどを合わせることが多く、摂取カロリーが増えやすい傾向にあります。
またパンは、精製された小麦で作られることが多く、食後の血糖値の上昇を示す指標である「GI値」がごはんより高くなりやすい特徴があります。主食を選ぶときは、量だけでなく食べ方や組み合わせにも注意しましょう。
それでも痩せないときは?|メディカルダイエットという選択肢

食事や運動を見直しても思うように体重が減らない場合は、体質や代謝の影響が関係しているかもしれません。そんなときは、医師の指導による「メディカルダイエット」を検討してみてもよいでしょう。体質に合わせた治療や薬の処方、オンライン診療による継続的なフォローについて紹介します。
体質や代謝に合わせた医師のサポートが有効
ダイエットがうまくいかない原因は、基礎代謝やホルモンバランス、体質や生活習慣などが影響している可能性があります。医師の診察や検査を受ければ、自分の代謝タイプや脂肪がつきやすい原因を把握できます。専門的なアドバイスを基に取り組むことで、効率的でリバウンドしにくいダイエットが望めるでしょう。
GLP-1などの薬剤で「痩せやすい体質」づくりをサポート
近年、GLP-1受容体作動薬などを用いた「メディカルダイエット」が注目されています。「GLP-1」は、体内で食後に分泌されるホルモンの一種で、食欲や胃の動きに関わる作用を持つことが知られています。
この仕組みを応用したのが、GLP-1受容体作動薬によるメディカルダイエットです。過剰な食欲を自然に抑え、食事量を減らしやすくなります。さらに、血糖値の急上昇を抑える作用もあるため、糖質の摂りすぎによる脂肪の蓄積を防ぐ効果も期待できます。
使用には副作用や投与量の管理が必要です。その際は、必ず医師の診察を受けて適切な薬剤と用量を選びましょう。GLP-1ダイエットの詳細については、以下をご覧ください。
※GLP-1受容体作動薬のダイエット目的での使用は適応外処方となります。
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オンライン診療で継続的にサポートを受ける方法
通院が難しい場合でも、オンライン診療を利用すれば自宅から医師のサポートを受けられます。ビデオ通話を通じて、生活習慣や体重の変化に応じたアドバイスや薬の処方を受けられるのが特徴です。体重の増減や副作用の有無を定期的に確認しながら治療を進められるため、治療を続けやすい利点があります。
よくある質問と回答

グルテンフリーダイエットに関して寄せられる質問をまとめました。この記事の復習としてご覧ください。
Q.グルテンフリーにしたら痩せた。その理由は?
A.パンやパスタなどの小麦食品を減らすと、炭水化物やカロリーの摂取量が抑えられ、一時的に体重が落ちる場合があります。ただし、グルテンそのものが関係しているわけではありません。
Q.グルテンフリーを2週間続けるとどんな変化がある?
A.短期間でも「お腹の張りが減った」「体が軽くなった」と感じる人もいます。しかし、体重の減少は主に炭水化物や脂質を控えた影響によるもので、長期的な結果には個人差があります。
Q.グルテンが体内から抜けるまで何日かかる?
A.研究では、グルテンは数日から1週間程度で体内から代謝・排出されると考えられています。個人差が大きいため、摂取を控えた後の体調変化は、数日を目安に観察しましょう。
Q.グルテンフリーは日本人には意味ないって本当?
A.グルテンフリーは、全ての日本人に必要な食事法ではありません。日本人は小麦の摂取量が欧米人の約3分の1と少ないため、変化を感じにくい場合があります。
食後のお腹の張りや肌の調子が気になる方の中には、グルテンを控えることで不快感が軽くなるケースもあります。
Q.毎日パンを食べるのはよくない?
A.パンにはバターや砂糖、ショートニングなどを多量に含む商品もあります。毎日たくさん食べ続けると、カロリー過多や血糖コントロールの乱れにつながることがあります。食べる量や頻度を調整して、適量を心がけましょう。
Q.グルテンが合わない人の特徴は?
A.食後にお腹の張りや下痢、倦怠感、肌トラブルが続く人は、グルテン不耐性や過敏症の可能性があります。症状が長引くときは自己判断せず、医療機関に相談し原因を特定しましょう。
グルテンを抜く前に、まずは栄養バランスの見直しを

グルテンフリーダイエットは、「グルテンを抜けば痩せる」という単純な仕組みではありません。実際に体重が減るケースの多くは、小麦製品を控えることで炭水化物やカロリーの摂取量が自然に減るためです。
反対に、グルテンを控えると体が軽く感じるなどの変化を実感する人もいます。大切なのは、食事全体のバランスを見直し、自分の体質に合った方法を継続することです。
過度な制限や自己流のダイエットは、栄養バランスの乱れやリバウンドにつながることもあります。「うまくいかない」と感じたら、医師や専門家に相談し、自分に合った方法で取り組みましょう。
出典
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