睡眠薬と睡眠導入剤に違いはあるの?
「眠れない」、「一旦寝付くことはできるのに途中で起きてしまう」など睡眠に関してお困りの方は多くいらっしゃいます。実際に日本人の約20%が睡眠に何らかの問題があると感じており、6%の人がお薬を使用しているというデータがあります1)。
睡眠に問題を抱えている時に使う薬はどのようなものがあるでしょうか。調べてみるとたくさんの薬があることがわかります。具体的には「睡眠薬」、「睡眠導入剤」、「睡眠改善薬」という種類に分けられています。
しかし、これらの薬にどのような違いがあるのかについては意外と知られていません。それぞれの薬は作用機序、作用時間が異なり、患者さんによって使い分ける必要があります。
今回は、「睡眠薬」、「睡眠導入剤」、「睡眠改善薬」についてそれぞれ解説していきます。
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睡眠薬とは?
睡眠薬は、睡眠障害で日中の活動にも支障が出るような状態(不眠症)に対して治療の1つとして用いられるお薬です。睡眠薬は病院で不眠症の患者さんに対して処方される薬で、ドラッグストアなどでは購入できません。
睡眠薬の中で効果が短時間のものを睡眠導入剤と呼ぶことがあります(睡眠薬=睡眠導入剤としている人もいます)。ドラックストアで購入できる睡眠改善薬は睡眠薬ではありませんので注意してください。
睡眠薬はいくつか種類があり、現在は以下の5つに分類されます。
①バルビツール酸系
②ベンゾジアゼピン系
③非ベンゾジアゼピン系
④メラトニン受容体作動薬
⑤オレキシン受容体拮抗薬
それぞれ簡単に解説していきます。
①バルビツール酸系
昔からあるタイプの睡眠薬です。効果も強いですが、依存性の強い薬です。その依存性の強さゆえ、現在は睡眠導入剤として用いられることはほとんどなくなってきました。
②ベンゾジアゼピン系、③非ベンゾジアゼピン系
現在睡眠薬として最も使用されている薬がこの2つになります。ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の違いは、化学構造式の違いが主で効果などは概ね同じものとなります。
こちらのお薬の特徴は製品によって効果の持続する時間(作用時間)が異なることです。作用時間によって以下の4つに分類されます2)。
1) 超短時間作用型(作用時間 2-4 時間)
2) 短時間作用型(作用時間 6-10 時間)
3) 中間作用型(作用時間 20-30 時間)
4) 長時間作用型(作用時間 50-100 時間)
不眠症のタイプによって使う薬を選択します。
例えば、寝つきが悪い方は超短時間作用型や短時間作用型の睡眠薬を選択します。
夜中に何度も目が覚める、朝方に起きてしまいその後寝付けない、寝てはいるけどぐっすり寝た感じしない、熟睡感がない方は中間作用型や長時間作用型の睡眠薬を使用します。
①バルビツール酸系、②ベンゾジアゼピン系、③非ベンゾジアゼピン系は脳の活動を抑制することで眠気を生じるメカニズムです。
④メラトニン受容体作動薬、⑤オレキシン受容体拮抗薬
2010年代に登場した従来の睡眠薬とは異なる働きをする薬です。他のお薬は脳の活動を鎮めるものですが、こちらの薬は睡眠に関わるホルモンに作用し、自然な睡眠を促す作用のある薬です。効果は少し弱いですが、副作用が少ないのが特徴です。
睡眠導入剤との違い
ここまで睡眠薬全般についてお話しましたが、睡眠導入剤と睡眠薬はどのように違うのかお話します。結論から言いますと、睡眠薬≒睡眠導入剤です。具体的には、睡眠薬=睡眠導入剤としている人もいれば、睡眠薬の一部を睡眠導入剤と呼んでいる人もいます。
睡眠導入剤と睡眠薬で定義を分けるとすれば「睡眠導入剤は睡眠薬の中で作用時間の短い薬を指す」ということになります。具体的に言うと、ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の薬の中で超短時間作用型が睡眠導入剤となります。
超短時間作用型である睡眠導入剤は、その名の通り、効果持続時間が短いので、寝始めの時に効果があり、3~4時間ぐらいで効果が消失していくので翌朝まで薬が残らず、目覚めが良いという特徴があります。
まとめると以下の通りです。
睡眠薬
・バルビツール酸系
・ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系
→この中で超短時間作用型(作用時間 2-4 時間)が「睡眠導入剤」
・メラトニン受容体作動薬
・オレキシン受容体拮抗薬
睡眠改善薬との違い
睡眠でお悩みの方がインターネット等で情報を調べると、睡眠薬、睡眠導入剤の他に「睡眠改善薬」という薬があることに気が付いた方もいるかと思います。睡眠薬、睡眠導入剤と睡眠改善薬はともに睡眠に対して働きかける薬という意味では共通していますが、中身は全く異なります。
具体的にどのような事が異なるのでしょうか。ここでは睡眠改善薬について睡眠薬との違いも含めて解説していきます。
- 睡眠改善薬の主な成分はジフェンヒドラミン
現在市販されている睡眠改善薬は様々な種類がありますが、そのほとんどの薬の主な成分はジフェンヒドラミンと呼ばれるものです。
ジフェンヒドラミンとは、抗ヒスタミン作用のある成分です。抗ヒスタミン薬は通常、アレルギー性鼻炎などのアレルギーをおさえる効果のある薬です。
抗ヒスタミン薬の中でジフェンヒドラミンは脳にも作用し、脳の働きが低下することで眠気の副作用が生じることが知られています。
病院で処方される睡眠薬や睡眠導入剤は脳の活動を抑えたり、自然な睡眠を促すような作用があるのに比べて、睡眠改善薬は抗ヒスタミン薬の副作用である眠気を応用して販売された薬になります。
- 睡眠改善薬はドラックストアで購入可能
睡眠改善薬はOTC医薬品の一種で、ドラッグストアで購入することができます。
※OTC医薬品:Over The Counterの略で、カウンター越しという意味です。OTC医薬品とはカウンター越しに販売されることが名前の由来です。
医師から発行される処方箋を必要とせずに購入できる医薬品の一つです。睡眠改善薬はOTC医薬品の中で第2類医薬品に分類されます。第2類医薬品は薬剤師または登録販売者から購入が可能で、購入時に使用法の説明を受けることがあります。
- 睡眠改善薬は一時的な不眠状態に用いる薬
睡眠改善薬は直接脳の活動に働きかけたり、睡眠に関連するホルモンに働きかけるのではなく、あくまで抗ヒスタミン薬の副作用としての眠気を利用した一時的な不眠に用いる薬です。副作用が強くでたり、数回服用しても効果がない場合は漠然と使用を続けるのでなく、病院を受診し医師へ相談するようにしましょう。
まとめ
今回は「睡眠薬」、「睡眠導入剤」、「睡眠改善薬」について、違いも含めてお話しました。実際比べてみると病院で処方される薬、市販される薬という違いだけでなく、どのように効くのか、どれくらいの時間効くのかなど大きな違いがあることがわかります。
患者さんによってどの薬が適しているのかは異なります。今回の記事を参考にして、病院で医師に適切に相談できる助けとなれば幸いです。
*当院では、ルネスタ、リスミー、デエビゴ、ロゼレム(いずれもジェネリック)の4種類のみを取り扱っています
参考文献
- Liu X, et al. Sleep loss and daytime sleepiness in the general adult population of Japan. Psychiatry Res 93:1-11, 2000
- 日本睡眠学会. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン. https://jssr.jp/files/guideline/suiminyaku-guideline.pdf (2022年8月30日アクセス)
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